読み終えて真相が明らかになったとき
真実へ導いてくれるピースが
最初から提示されていたとわかります。
こういう組み立て方はいつも通りうまいです。
しかし、本作はどうにも一本調子な印象が残る。
ボッシュの恋人もあまり魅力的ではなくて残念。
犬がくわえてきた骨。
それは、虐待された少年の変わり果てた姿だった。
ハリウッド署のボッシュは、この事件を解くべく、
少年の家族を調べはじめる。
が、そこにはさらなる悲劇が待っていた…。
ボッシュ・シリーズ第8弾
警察葬で行われる弔礼射撃
空砲で吐き出された真鍮の薬莢
ボッシュは警官の葬儀に参列するたびに
必ず薬莢を拾ってきた。
薬莢でいっぱいになった壜。
こういったエピソードは
マイケル・コナリーらしいですね。
センチメンタルで印象的。
以下、未読の方はご注意を
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ジュリア・プレイシャーは
英雄になりたい病にかかって自爆した。
市警幹部は容疑を自殺した小児性愛者にかぶせ
捜査を切り上げようとする。
真実を探り当て殺人者を捕まえることよりコスト優先。
ジュリアはそんなふうな市警の空気に影響されたのか
しかしそれはボッシュの捜査信条とは
あまりにもかけ離れたふるまいです。
だから私は(大半の読者は)ジュリアを好きになれない。
主人公の恋人に魅力がないなんて、つまらない。
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「職務とバッジと使命がなければ自分は道に迷うだろうと、
つねに自覚して生きてきた。
この瞬時にボッシュは、それが全部手のなかにあっても、
やはり道に迷うかもしれないと気づくに至った。
いや、それがあるがために、道に迷うかもしれない。」
「もっとも必要だと考えていたものこそが、
ボッシュの周囲に虚無感の帳(とばり)を降ろすものだった。」
「ボッシュは決意した。」
ボッシュの大きな決断でこの本は終わります。