童謡『赤い靴』の主人公にはモデルがいたという定説に、真っ向から反論する本です。
論争の是非はさておき、この本を読んでの感想は、「一旦定説が作られると、それを覆すにはものすごいエネルギーが必要だ」というこです。 赤い靴の主人公にはモデルがいたという話は、モデルとされている少女の親族が母親から聞いたこととして新聞に投稿したことから始まります。 そこから調査が始まりますが、残念なことにモデルの少女の墓は日本国内にあり(そこで定説は病気のため外国に渡れなかったと”推測”しています)、かつ養子にしたといわれている宣教師には、その少女を養子にしたという記録は残されていません。また、作詞者の野口雨情が書いた自作解説にも、モデルがいたような記述はなく、かつ定説とされるストーリーとも合致しません。 普通に判断すれば、モデルがいたとする説の根拠は弱いことが明瞭ですが、TV等の影響で定説になってしまうと、これが一人歩きして全国に赤い靴の像が建てられてしまいます。 ○○という可能性がある、と指摘することは簡単ですが、○○ではない、と断言するのはきわめて困難です。 赤い靴のモデル論争というより、定説を覆す難しさと、定説が作られてしまった後の怖さを、この本は教えてくれると思います。↧