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『人脈づくりの科学』

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人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る

人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る

  • 作者: 安田 雪
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
遠くにいる人ほど役に立つ、
つながる数よりも質が重要、
よく会う仲間よりたまに会う人が支えになる…。
ネットワーク分析で最も効率的な人間関係の築き方を解き明かす。
ビジネスで成功するために最適な人とのつながりはこれだ!
今の会社に勤めるようになって今年でちょうど20年が過ぎたが、振り返ってみるといい仕事ができたなと思う時期と、そうでない時期が入り乱れているように思う。人事異動で部署が変われば当然そういうことはあるだろうが、同じ部署に在籍している期間であっても、仕えた上司や僕の下で働いてくれた部下、組織全体を預かる部長やさらにその上の往来で、それまでうまくいっていたチームがうまく機能しなくなったり、うまくいってなかったチームがうまく機能するようになったり、そういうことがよくあった。 組織は生き物である。ある組織が最高のパフォーマンスを発揮できるかどうかは、それを構成する人と人の組合せにかかっている。そして、そこにいる自分自身が個人として最高のパフォーマンスを出せるかどうかも、周囲にいる人との人間関係に大きく依存する。人事異動で自分のチームに誰が来るのかを制御できるのなら、会社組織全体を見回して「このポストにはあいつが欲しい」と人事担当にリクエストできたらチームのパフォーマンスをかなり高いレベルで発揮できそうだ。実際にはそんな虫のいい要望はしても通ることは少ないと思うが、それでも20年も働いていればそういう決まり方で当時僕のいた部署に呼ばれた奴を一度だけ見たことがあるし、逆に長くいたかったのに思いのほか早く移動させられてしまうという経験を自分自身もしたことがある。 つまり、人事担当といい関係を築いているかどうかというのも、自分の動かしている組織のパフォーマンスを自分の思う方向に持っていくのに役立つ要素の1つだと強く感じる。僕の場合は人事担当とのそういういい関係が築けていないから、欠員の補充をすぐにしてもらえずに1年以上待たされたことも、異動希望なのになかなか異動させてもらえないということも、逆に残留希望していたのに望外の早期の異動の辞令を受け取ったことも何度かあった。 本日ご紹介する本は、そういう、人と人とのつながり方のあやで組織のパフォーマンスは相当左右されるというのを前提に、ではどうしたら組織のパフォーマンスを維持発展できるのかという問題意識にのっとって読んでみようと思った。今さら僕自身の人事になぞらえてどこをどうしようという話ではないが、僕らがやっている仕事自体が人と人とが織りなすネットワークに依存しており、このネットワークの質をどう高めるのかは常に考えておかないといけないと思っている。ネットワークを構成する人がそれを意識して行動することは当然だが、このネットワークを管理運営している者にとっても、ネットワークが持つ潜在能力をどう高めるのか、発揮できるようにするには何かできることはないのか、それは個人の努力なのか、制度化して組織的に対応した方が良いことはないのか―――疑問に思うことは多い。 そういう諸々の点について、参考になるような本はないものかと物色していて、いい本に出会ったと思う。文章も読みやすいし、所々におさらいができる要点がまとめられているし、多分実際のネットワーク分析では複雑な行列や数式を用いて統計処理もついてまわるのだろうけれど、そういうものを極力抑えて平易な書き方に徹している。こういう本を読むと、僕らの職場での人間関係だけではなく、Facebookやmixiといった、僕が利用しているSNSの利用の在り方についても得られる示唆がある。
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 プロジェクトを遂行する際、人々のコンビネーションが個人の力量の総和を超えた力を発揮したり、学者の研究活動において、特殊なネットワーク上の位置が戦略的な優位性をもたらしたりする現象は、謎めいているが夢を見せてくれる。昨今の「関係の持つ力」、ソーシャル・キャピタルへの関心の高まりにも、個人の能力を超えた力に対する人々の熱い期待が感じられる。(p.2)  優れたネットワークとは、自分にとって、そしてともにそのネットワークを構成する他者にとっても、豊かな情報源として、そして資本として機能するネットワークである。自然発生的なネットワークは、優れたネットワークを生み出す母体である。  しかし、「自然に発生するネットワーク=優れたネットワーク」ではない。前者は後者の必要条件であるが、十分条件ではない。(中略)  先に述べたように、パーソナルネットワークは、自然のままにしておくと密度が高くなっていく。知り合い相互には関係が発生し、ネットワークには緊密な糸が張りめぐらされ、頑健になる。だが、密度の高いネットワークは情報収集力が弱いのだ。(中略)  密度が高いネットワークは、頑健だが外部に向かっての閉鎖性が高く、情報収集力が低い。情報収集には、きわめて非効率的なのだ。一方、密度が低いネットワークは、頑健性では劣るが、外界に対して開放的であり、情報収集力が高い。(pp.52-53)  組織にとってのソーシャル・キャピタルは、それぞれの人的資本を持つ社員が、社内外の他の人々とともに働きながら形成する関係性に宿る資本なのである。  とはいえ、ソーシャル・キャピタルの根源であるはずの人間関係は、仕事にプラスの効果どころかマイナスの効果を及ぼすことも少なくない。実際に、 「このプロジェクトチームだからこそ目標が達成できた」 「この上司と部下に恵まれたからこそ素晴らしい開発に成功した」 といった話が、日常の職場で公にされることはきわめて少ない。一方、人間関係がもたらす負の効果は、当事者のみならず周囲の人間にも明らかなことが多い。  日本人のビジネスパーソンにストレスの要因を尋ねてみると、まずあがるのが職場の人間関係だ。若年労働者の退職理由を調査してみても、職場の人間関係が原因であることが多い。(p.61)  数理社会学者の辻竜平と針原素子は電話帳を用いて、日本人の知人数を推定した。彼らの推定値は200~300人である。米国人についての推定値が1200~1500人程度とされていることを考えると、日本人の知人数の少なさは驚くべきことだ。推定方法上の課題も多々あるとは思われるが、あまりにも世間が狭いと言わざるを得ない。  日本の人口を約1億2000万人とすると、我々は平均して日本の全人口の0.00025%しか知り合いがいないのである。つまり、日本人の99.99%以上は知らない人なのである。(p.80)  スモールワールドは人脈構築にも多くのインプリケーションを与える。  第1に、ほんの少しの努力で、人脈を一気に拡大させることができる。少し離れたところにいる人に向けて、1本リンクを伸ばすだけで、関係がふわっと外界に対して開くのである。  外界のつながりを保つわずかな紐帯。その紐帯こそが、人々の世界を広げ、同時に「世間は狭い」という認識をもたらす。  人々の関係は、情報も、そして感情をも伝播させる。それは、ヒット商品もファッションも噂も疫病も運ぶ翼なのである。(p.91)  ブリッジは、自分がいつも所属しているグループ内部で流通している情報とは違う、異質な人々からの新しい情報をもたらす。同時に自分が所属しているグループ外へと、新しい情報を流すことができる。(中略)  自分のパーソナルネットワークの内部にブリッジを数多く含む社員は、相互評価において高く評価される傾向が強かった。だが、前述のように、9割がたのブリッジは1年とたたぬうちに消滅してしまう。  情報がネットワーク内部でどのように流通するかを見極めるために、第2章で述べた媒介中心性に注目するのは1つの方法である。その人を通過しなければ情報が先に届いていかない媒介点は、ボトルネックとなりうる存在である。  しかし、関係の仲介者は、永遠にその関係を媒介していられるわけではない。ブリッジのはかなさはそれを示す。媒介者である人間はたやすくその位置を失う。同時に、ブリッジのもろさは、それまで媒介者ではなかった者が、関係を仲介するブリッジをかける側の人間になれることも示している。(pp.116-117)  目的を持って形成される集団においては、人間関係を自然にゆだねていてはいけないのである。家族、恋人、友人などは対象外である。問題なのは、経済的利益を追求する企業組織や、何らかの理念の実現を求めるNPOやNGOなどの組織における人間関係である。  優先的選択と成長という、いわばネットワークの進化を司る法則は、多くの関係をスケールフリーに導き、時間とともに勝者がより強く、弱者がより弱くなる構造をつくりだす。  多数の部下を管理、統率していくリーダーには、職場における人々の関係をより良い状態に維持する努力が常に求められている。感情ではなく意志を持って、業務推進に最適な状況を意図的につくりだす必要がある。(中略)  組み合わせを考え、関係が本来持つイナーシャに、人間関係をゆだねて放置しない。関係の本来的なイナーシャは、自分と似通った人々を選好し、安易に同質的な人々と固まりたがる慣性だ。職場の人間を最適な形で結び合わせ、最良の働き方ができるように調整する。それは、ほんのわずかな工夫で可能なのだ。(pp.234-235)  だからこそ、時にはランダムに関係の結びかえをしたり、あえて日常生活の範囲外へ異なる種類の人々との接触を求めに行ったりする必要があるのだ。自分自身についても、また職場の人々についても同様だ。(中略) だが、その異質な他者を理解しようとする努力と、異質なもの相互の組み合わせが、新しい情報、新しい発想、新しい世界へとつながることは間違いない。  さらに言えば、常に外部に対してさらなる資源を求め、異種の人々との連結を考えることに加えて大切なのは、つながり方の見直しだ。組み合わせの変更と並べ替えである。  職場で関係の齟齬や相性の悪さから生じる非効率が生じているならば、多少のつなぎかえや組み合わせの変更をしてみよう。目的は、自分や他者の人間関係への介入ではなく、より風通しの良い効率性を、組織全体、つまりかかわっているすべての人々にもたらすことなのだ。  組み合わせと関係は妙なるもので、同一の素材や原料であっても、並び方、連なり方と距離が変化するだけで、まったく異なる結果が生まれてくる。(中略)  新しい資源がなければ、今ある資源の組み合わせ方、並び方、すりあわせ方を変える。それは、限られた資源と時間しか持たぬ者の、1つの優れたあり方であり、闘い方だ。(pp.236-237) 優れた人脈とは結果の出せる人間関係(p.243)
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本書を読んで特に印象に残ったのは、スモールワールド・ネットワークでのブリッジの効力が長くて1年だという記述であった。例えば僕が職場の他の人間が持っていない外部の誰かとのつながりをネタにして何らかのビジネスにつなげようと思ったとしても、その人を職場の他の誰かに紹介したらそこで別のブリッジが出来上がるわけで、僕自身の持つブリッジはそこではアドバンテージとならなんくなる。ある人に自分の知るある人を紹介したら、この2人が仲良くなってしまい、自分が毎度毎度仲介しなくてもよくなってしまったという経験なら誰でもしたことがあるだろう。 また、人の記憶もはかないもので、せっかくつながりができても、その後のフォローをなかなかせずに5年10年を過ごしてしまうと、お互いにつながっているメリットがどんどん失せていってしまうこともあるだろう。僕らが仕事上交換する名刺なんて、3年も経つと8割ぐらいは役に立たないし、その時は親しく一緒に仕事をしたとしても、どちらも担当を離れて10年近くも経ってたまたまある日会社の廊下ですれ違っても、「あれ、今の人どこかで見たな」ぐらいは思い出せても、具体的にどこでどうつながっていたか、名前は何だったか、まったく思い出せないこともよくある。つまり、せっかくできたつながりであっても、放置しておけばどんどん劣化が進むということなのだ。 最近、僕は6年前に仕事でお世話になった九州方面のある大学の先生と連絡を取る必要が生じた。僕自身の仕事というよりも、職場の別のスタッフにその先生を紹介するというのが僕のタスクだったのだが、調べてみると数年前に別の大学に移られ、僕がいただいていた名刺のメルアドで連絡がつかない恐れがあるのがわかった。それ以前にすでにメールでの連絡は4年以上とっていなかったし、それが突然連絡を差し上げるというのがいいのかどうか、一瞬ながら躊躇もした。でも恐る恐る連絡してみると、「いやぁ、あの時は世話になったねぇ」という感じで、長期のブランクを一気に埋めてしまうようなポジティブなお返事をいただいた。6年前は僕も本当にいい仕事をしたのだなと感慨に浸る一方、それでもつながりを維持していく何らかの工夫を常に講じておく必要性について、改めて痛感したエピソードだった。

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