アキレス将軍と呼ばれた国民的英雄がホテルの一室で怪死した。日本への赴任を終えて数年ぶりにモスクワに戻った外交官ファンドーリンが調査を開始するが、その前には不気味な殺しやとロシア帝国の暗部が見え隠れてして…
良い意味で今の時代にあるまじき優雅でロマンティックなミステリでした。日本の時代小説が好きな方にはかなりおすすめできます。
実在の人物や事件に取材したリアルさと、ありえたかもしれない/現実には存在しなかった過去のブレンドが絶妙です。主人公も悪役もみんな格好いい、古い時代の良いところも悪いところも取り込んで現代に蘇らせた活劇なんて、最近ではなかなかない貴重な作風だと思いますよ。
著者は日本文学をやっている人で、主人公ファンドーリンの従者としてかつて彼が命を救った日本人マサが登場します。へまをやらかしたお詫びに腹を切ろうとするなど(この下り、ちょっとだけ狂言「附子」を連想したのですけれども別に関係ないかもしれません)誇張された日本文化にありがちな真似もやらかすキャラなのですが、細かな部分に隠しきれない正確さが滲んでいるあたりが日本人の笑いを誘います。
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