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『レッド・ドラゴン侵攻! 完結編 血まみれの戦場』ラリー・ボンド

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 今年(二〇一三年)一月末、中国海軍の江衛Ⅱ型フリゲート〈連雲港〉が、近距離から海上自衛隊の護衛艦〈ゆうだち〉に射撃指揮レーダーを照射するという事件が起きた。中国側は監視(捜索)用レーダーだと弁解したが、距離は三キロメートル、目視できる距離で捜索することなどありえないし、照射された側には容易に識別できる手段がある。  江衛Ⅱ型フリゲートは、艦によっては本書に登場する中国海軍フリゲート(艦種も艦名も記されていない)とおなじYJ(鷹撃)‐83対艦ミサイルを装備している。満載排水量二二五〇トン、全長一一一・七メートル、速力は二七ノットである。対して護衛艦〈ゆうだち〉は、ジェーンズ年鑑では「ヘリコプター搭載ミサイル駆逐艦」に分類され、満載排水量六二〇〇トン、全長一五一メートル、速力三〇ノットだから、小型犬が大型犬に吠えかかったという光景だっただろう。交戦状態にない国の艦船に対してやるようなことは、国際常識として、ちょっと考えられない行為だ。ついでながら、本書の主役級のアーレイ・バーク級イージス駆逐艦〈マッキャンベル〉(実在)は、〈ゆうだち〉よりもさらに大きい。  ところで、本書に登場するフリゲートは、HQ(紅旗)‐61ミサイルも搭載しているので、ひとつ前の世代の江衛Ⅰ型とおぼしい。この型は、HQ‐61の性能が不充分だったので、四隻が就役したところで建造を打ち切られている。巡洋艦〈温家宝〉とこのフリゲートのコンビと〈マッキャンベル〉の最終対決は、この四作目の見所のひとつだ。  武力による国境の変更は許されないというのが、第二次世界大戦後の先進国のコンセンサスだったが、それを中国は破ろうとしている。歴史的に最大の領土を、わが領土とする考え方がそこにある。これがいかに矛盾した考えであるかは、「日本が侵略により奪った」という論旨からも露呈している。なぜなら、中国の最大の領土は、侵略により得たものであったからだ。だいいち、中国は元来、「中原」を本拠となしてきたのではなかったのか? それはともかく、昨今、この中国の極端な武力外交(外交はもともと武力を拠り所にしたものであるとはいえ)を繁栄している軍事スリラーが増えてきた。ラリー・ボンドの新作Shattered Tridentもまさにそうで(二見文庫近刊予定!)こちらは海上自衛隊のイージス艦や潜水艦も登場するので、期待して待っていていただきたい。
レッド・ドラゴン侵攻! 完結巻 血まみれの戦場 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

レッド・ドラゴン侵攻! 完結巻 血まみれの戦場 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

  • 作者: ラリー・ボンド
  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2013/06/21
  • メディア: 文庫
Shattered Trident

Shattered Trident

  • 作者: Larry Bond
  • 出版社/メーカー: Forge
  • 発売日: 2013/05/07
  • メディア: ハードカバー

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