7.8点
長野で猟師として生活する著者の生活を描いたコミックエッセイ「山賊ダイアリー」(リンク先感想)。
現在3巻まで出ており、猟師トリビア満載で、新鮮な驚きに満ちた内容と、厳しい自然と相対しつつも、
ちょっととぼけた登場人物達の行動や姿が、良い味を出していて(84歳、銃の腕も、罠の腕前も
達人な佐々木さんは、ヒートテックも知っている←著者は佐々木さんに教えて貰った)、
1~3巻、どれも外れ無し!かなり好きなマンガ。
で、そのマンガに触発されて読んだのが「羆撃ち」。
「羆(ひぐま)」だけど、「くま」と読む。
著者は、子供の頃からハンターになることを目指し、それを実現する。
第一章は、子供の頃から持っていたハンターへの憧れの気持ちや、いかにしてハンターに
なったか、自分の銃を初めて手に入れた時の興奮などが描かれている・・・・んだけど、
著者にまだ興味を持っていなかった私は、第一章を読んで、著者の思い入れが延々と語られるのに
ひいてしまい、この本を読んで失敗だったかな?とちょっと思った(^^;)。
しかーーーし、第二章以降、実際の猟の描写になって、その思いは完全に払拭!!
北海道の自然の中、鹿と相対する描写、命を奪うという行為、そして獲物への敬意・・・、
目の前で展開される緊迫感あふれる描写と、著者の自分を律し鍛錬していく姿に感動。
羆を追うようになってからは、より緊迫感・臨場感に溢れ、著者がいる大自然の臭いが、
木々の音が、山の中を歩く著者の気配が、感じられそうな気が。
そして、羆の猟がびっくりするぐらい厳しいことも知った。
羆の怖さは、大正時代に羆に襲われた村の恐怖を描いたドキュメンタリー「羆嵐」(リンク先感想)で、
知っているんだけど、そんな羆がいる森の中に、一ヶ月以上キャンプ、一匹の羆を追い、
数日間は森の中でビバークが当たり前・・・という、想像以上に過酷な猟。
羆がいる森、それも近くにいる可能性が高いのに、そこで寝るって・・・・それだけで怖い(^_^;)。
一人で猟をしているので、羆を倒したとしても、肉を全部運ぶため、倒した場所との往復だけで
4日・4回も費やしたり・・・・・・・厳しいっ!!
「山賊ダイアリー」は、自宅から通える場所に行き、夜になる前に帰宅するという猟だったので、
この「羆撃ち」を読んで、同じ猟でも、全く違うものなんだなーとも驚いた。
中盤からは、著者が猟犬として育て上げたフチとのエピソードも加わり、これがまたいいっ!!
著者のフチへの愛情が行間からこぼれ出るようで、それが過酷すぎるとも言える羆猟の
エピソードと合わさり、物語に奥行きを出している。
後半は、アメリカに渡りハンティングガイドの学校に通い、アメリカでハンティングガイドの
仕事に従事するエピソードなども書かれていて、アメリカのハンティングの実情が見えて、
これも興味深かったけど、やっぱり、すごいのは、北海道の大自然の中で、たった一人で
羆と戦う著者の姿。
自然の中で生きる事の大変さ、凄さだけでなく、他の生き物の命を奪って生きている事を
実感せず生きている自分たちのことも、改めて認識できる本。
「山賊ダイアリー」が好きな人に、とってもお勧め(^-^)ノ。
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