『エコノミストには絶対分からないEU危機』 広岡裕児 2013/03
著者はフランス在住のジャーナリスト。 ユーロ危機の原因は「市場」の「社会」からの乖離であるとする本。
タイトルから期待するほど目新しい意見はない。
そもそもの発端はドバイ・ショック。ドバイ自身は近隣産油国の支援ですぐにショックが治まるが、市場参加者は次のドバイを探す行動に出る。そこで目をつけられたのがギリシャ。
ギリシャ国債のパニックの原因のひとつは格付け会社。格付け会社は危機に際してマッチポンプである。
ゴールドマン・サックスはギリシャから国債発行のサポート業務を引き受け、国債発行を成功させる裏でCDSを買うように顧客に勧めていた。CDSを買うということはデフォルトの可能性が高まる方向にかけるということだ。
「価格は実態経済を正しく反映する」というのは信仰だと述べる。市場では人工的な情報操作が平気で行われているという。
金融市場の不透明性は、株で40%、デリバティブで85%、債権で95%、為替で100%だと仏国会で証言した人がいる。
EUに加盟する国にはユーロを導入する義務がある。英国やデンマークの不参加は特例。
「市場」はお金を原料にしてお金を儲ける「お金屋さん」の市場。「社会」から吸い上げたお金は「市場」に停滞している。「市場」の敗者は穴埋めに「社会」からお金を持ってくる。しかし勝者に対する課税は少なく、「社会」は貧しくなる一方だと述べる。
「市場」に振り回されない「社会」の経済を作るには、本来の金融、顔の見える投資・融資を復活するのだと述べる。信用金庫のようなものを想定している。
↧