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掏摸(すり)/中村文則・著/海外でも人気・・・らしいクライム小説!

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掏摸(スリ) (河出文庫)

掏摸(スリ) (河出文庫)

  • 作者: 中村 文則
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/04/06
  • メディア: 文庫
芥川賞作家・中村文則先生の「掏摸(すり)」の英語版が米国で けっこう評判、LAタイムズ文学賞の候補にもなった(惜しくも受 賞は逃した)、という記事が今年4月に新聞に載ってたんですよね。 記事を読んで、「海外で日本の小説が評価されるのってのはうれ しス!」、そして「日本の(人情もの系の)刑事ドラマに出てくるよ うなベテランのスリが主人公の小説がもし海外で評判なら、いと をかし」と思いまして、まぁ今回読んでみたってわけです! まず主人公ですが、期待と違って若い、腕の立つスリ(年齢はたぶ ん、小説の中では語られてなかったと思いますが、20代後半~30 代半ばの間って印象です)でした。 小説の全体的なイメージをいえば、凝った詩的な言い回しが前面 に出てくる、セピア色(というよりモノクロームか?)のハードボイ ルド風クライム小説といったところでしょうか。 あとですね、余白が多い小説ですよ。 たとえば主人公はときどきスった記憶がないのに誰かの財布とか 小物とかが自分の上着のポケットに入ってることがあって、「また か・・」とつぶやいたりするんですけど、その理由について終盤で 触れるんだろうと思いきや全然触れない・・・みたいなね。 その他にも、オトコはなぜ、シゴト(スリのことです)のときに感じる 緊張感(達成感)だけを求めて孤独に静かに生き続けているのが この小説の重要なカギであるはずなんですけど、そこまで具体的 には過去は説明しないなんてのもあって、とにかくフワっとしたま まが多いわけです。 「掏摸」が海外で評価されたのは、日本が舞台なのに欧州の歴 史ある街のスリの物語のような全体を覆う陰鬱な雰囲気がある からでしょうか。 そして余白が多いのが却ってよかった、ってのもあるような気が してきました。 余白が多い、つまりそれって、日本人以外にはわかりづらい日本 人ならではの感情の機微なんてのをしつこく書き込まず、読者の 想像力に任せてるってぇカタチなわけですよね。それがたとえば アメリカの読者が受けいれてくれる余地にもなった・・・ってのは 深読みでしょうかね? えっと、すみません。独りよがりな分析はここまでにします。 ミシェルの「掏摸」に対する評価をまとめます。  ・中村先生が「掏摸」で狙った方向性はミシェル好みの範疇  ・「余白」の多さはミシェルにとってはどっちかってぇと物足り   なさに繋がってると感じた。  ・主人公が運命を握られてしまう闇社会の魔王「木崎」のキャラ   クターは、伊坂幸太郎先生の小説をなんか彷彿させるし、   ややマンガ的・・・ という理由から、「まぁまぁ面白かった」止まりの評価とさせても らいます。 おわり   

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