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【書評】ビアトリス・ホーネガー『茶の世界史』

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世界中をかけまわる”茶”について、その発見から世界中に広がるまでを幅広く叙述している労作ですが、結果として近代史の植民地政策に関する良質のテキストになっています。
茶の世界史―中国の霊薬から世界の飲み物へ

茶の世界史―中国の霊薬から世界の飲み物へ

  • 作者: ビアトリス ホーネガー
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2010/02
  • メディア: 単行本
茶を商品として開発したのは中国です。 第一部で唐代における中国の茶研究家陸羽の記述から始まり、日本の茶道(千利休)にも触れます。 第二部からが、イギリスにおける茶需要の増大と、代金としての銀の調達に困ったイギリスが清にアヘン戦争をしかけていくすがた。さらには茶貿易の独占的利益を失ったイギリスが植民地であったインドの土地を奪い、奴隷を動員してインドで茶を製造する。 これらの、現在では人道的非難に値し、当時でも非難に値すると思われる行為が、淡々と歴史的事実を積み重ねることで描かれています。 また、東インド会社にもかなりのスペースを割かれています。 ”植民地支配とはどういったことか”というのが茶の歴史を通じて読者に伝わります。 日本が植民地化されなかったのは様々な理由があると思いますが、本当に幸運だったと思います。 本書は茶について深く知りたいというひとだけでなく、植民地政策の具体例を知りたいひとにとっても有益な良著だと思います。

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