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『俺の妹がこんなに可愛いわけがない 12』/伏見つかさ

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<あらすじ> “人生相談”から始まった兄妹の物語もついにフィナーレ! やれやれ……俺が長々と語ってきたこの物語にも、そろそろ終わりが見えてきたようだ。まあんなこと言っても、物語ってのはたいがいラスト付近が一番キツいもんで、俺の高校生活最後の数ヶ月は、そりゃもう大変なことになる。まさしくクライマックスってやつだ。そんなの、平穏を愛する俺の人生にはいらねーのにな。けど、まあ、やってみるさ。地に足つけない、嵐のような人生も、なってみりゃあ面白い。手ぇ抜くのはもったいないし――俺が始めた物語には、俺自身がケリを付けるべきだろう。   ……ここまで付き合ってくれて、ありがとうな。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)

  • 作者: 伏見つかさ
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫
感想は追記にて。 なお、感想には多量のネタバレが含まれます。アニメは原作をラストまで描く事が決まっているため、アニメ派の人が読むと楽しみを大いに奪われる可能性が高いため、読まないことをおすすめします。あと、たいていの人には「キモ」な感想になると思います。あらかじめ御了承ください。<感想> 5年間続いたこの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』もついに完結。自分が5年前に読み始めたときのこと、状況を思い出してちょっと懐かしくなりました。電撃文庫と言えば、ちょっと前に巨大掲示板で話題になりましたが、今思えば1巻発売されたときもそんな感じだったような気がするなぁ、なんて思い出したり。そして、自分の1巻の感想を読み直して恥ずかしくなったり。 この最終巻。ずばり一番の注目のポイントは、「京介が一体誰を選ぶか」という一点にかかっていたと思います。多くの人は黒猫と結ばれることを期待していたかなぁ、と思います。私の予想としては、11巻で遂にラスボスとして姿を現した地味子こと田村麻奈実でした。その一方で、桐乃エンドを期待する思いも少しありました。 その事について述べる前に、私の恋愛ものに関しての考えに触れておきたいと思います。日本には多くの恋愛ものがあふれています。歌の歌詞には愛が溢れていますし、ラノベもラブコメものが定番。小説も恋愛ものは基本的な題材ですし、ベタ甘ラブコメが得意な有川浩さんが売れている現状があります。 その中で、多くの人が嫌うものに「近親者の恋愛」があると思います。あいにく私はそういう題材に積極的に接してきたわけではないので、取り扱った作品を多くは知らないのですが。私が見たもので覚えているものとして、古くは「禁断の果実」というドラマ。表現をぼかしていたもののアニメ版「あかね色に染まる坂」。マンガの『あきそら』。ライトノベルだとメインではなかったものの『ROOM NO.1301』。そして、2010年に放送され話題となった、「ヨスガノソラ」。エロゲ原作のものがふたつほどありますが、エロ本やエロゲだともっと多いでしょうね。 「ヨスガノソラ」の穹編ラストでは、かなり否定的な意見が見られたように記憶しています。しかし、私は「近親者への愛」をテーマにした作品は大変興味深いものだと思います。そもそも恋愛ものにおいて、その愛を妨げる障害が存在します。身分の差、人種の差。経済的問題から生ずる周囲の反対。色々です。 そして、ふと考えたとき「近親者への愛」は考え得る限り最大級の障害ではないでしょうか。それはすなわち、感情と倫理の対立。人間の感情は、モラルを越えることができるか。多くの文学では、不倫といったもので取り扱われるものですが、それを最大限に高めたものが、「近親者への愛」ではないか、とあるとき思うようになりました。そして、文学だからこそ取り扱えるし、取り扱うべきテーマではないかとも。 とはいえ、多くの人が嫌悪感を抱くことになりやすいものであり、デリケートな問題であるため、「あかね色に染まる坂」ではかなりぼかした表現になりましたし、『あきそら』では読者にすべてを託した(投げっぱなしともいえますが)ラストになりましたし、『ROOM NO.1301』ではメインではありませんでした。ちなみに、「禁断の果実」に関しては、見ていたことや一部シーンは覚えているのですが、内容は全然覚えていません。「ヨスガノソラ」はガチで原作再現したために、批判もありました。 ただ、挑戦するに値するテーマであるこそ、どのように「桐乃エンド」を描くか楽しみである私がいましたし、期待していました。とはいえ、「桐乃エンド」である場合、「ライトノベル」であることを利用して、何となくうやむやにしてしまうのではないか、とも思っていました。 そして、発売日。残念ながら私の住む九州は発売日の大体2日遅れの発売になります。しかし、インターネットに接している以上ネタバレを避けることはできませんでした。私の場合は、もう開き直って逆に自分からネタバレを喰らって、「もう何も怖くない」となりました。そして結末を知り、批判意見があることを知ったからこそ(最初に私が見たのは、Amazonの☆一つレビューでした)、どのようにラストまで持っていったのか、期待して読みました。 すみません。前置きが長くなりました。結論から言って、最高の結末。この一言です。私の中では、2013年のライトノベル評価は、間違いなくこの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の最終巻が一位です。ここ5年10年私が読んできたライトノベルの中でも、最高の一冊と言っても過言ではありません。それほど、私には素晴らしい一冊でした。 一体何が私のこの評価に繋がったのか。それは、作者が読者に対して真摯であったことです。前述したとおり、ライトノベルであることを逃げ道のようにして、ラストを描く事も可能だったと思います。ハーレムは続くよ、というラストもなかったわけではないと思います(その場合は評価はダダ下がりでしょうが)。しかし、ライトノベルらしい、これまでのこの作品らしい要素はありつつ、倫理観という障壁に立ち向かう展開が繰り広げられていました。そしてラストは、あくまでも現実的に考えられるところに落としてきました。このことに不満を持った人もいるようですが、私としてはあえて現実的なところにラストを持ってきたところに、作者のこの作品に対する意気込みを感じました。 麻奈実が京介に放った言葉は、多くの読者の代弁ではないでしょうか。それでもこの結末を描ききったからこそ、私は心が震えてしまいました。最高の作品だ、と感じました。 あやせ。黒猫。加奈子。麻奈実。このラストになるなら、この4人への展開はなくても、あるいは少し変えてもよかっただろう、という意見は当然あると思います。しかし、京介のこの行動こそ、作者の読者に対する真摯さの表れだったように思います。うやむやな結末は描かない。最後まで物語を描ききる、という作者の真摯さが。それを感じてしまった私には、この行動を賞賛こそすれ、批判することなんてできません。 そして物語の最後の一文。それは、物語の始めの一文となったものと全く同じだったと思います(いま1巻が手元にないため確認できず)。しかし、この一文が12巻読んだことで全く違ったものとして感じられました。大量の感慨と共に、私の胸を締め付けました。作者が最初からこれを考えて、またこの効果を考えて作品を生み出してきたのかと思ったら、素晴らしいとしか言いようがありません。 そんな私があえて難をつけようとすれば、展開でしょうか。第一章がこれまでの作品を思い起こさせ、2人の歩みを振り返るようで、いきなり感無量になってしまった私としては、第二章と第三章の序盤は、何だかもどかしくなってしまいました。理想としては、第二章があり、第一章があって第三章に繋がっていることかな、と頭の中で構成を考えもしました。 しかし、この結末を前にしては、それも本当に些細なことだなぁ、なんて思えました。それほど、私にはベストな結末でした。 描ききった結末に、京介の選択に批判があるのは、私も納得できます。それは、多くの人が受け入れがたい選択であるからです。作者も当然それは分かっていたでしょう。しかし、賛否両論が、もっと言えば批判的な意見が多く出るであろうこの結末を描ききった作者の勇気にはただただ敬礼するばかりです。そして、最後まで真摯であった京介の選択は、私を強く満足させてくれました。 強く強く私の心を打ち付けるラストに、読み終わって一時間経つ今も胸がいっぱいです。全12巻。思い返せば色々ありましたけども、大変素晴らしい作品になりました。多くの人には勧められない作品かも知れません。しかし、この作品はきっと私の中にいつまでも残り続ける、そう確信できます。素晴らしい作品を本当にありがとうございました。

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