<裏表紙あらすじ>
京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店「タレーラン」。恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店で、運命の出会いを果たす。長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・切間美星だ。美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮やかに解き明かしていく。だが美星には、秘められた過去があり――。軽妙な会話とキャラが炸裂する鮮烈なデビュー作。
一気に出版された「このミス」隠し玉4冊も、
「Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件」 (宝島社文庫)
「保健室の先生は迷探偵!?」 (宝島社文庫)
「公開処刑人 森のくまさん」 (宝島社文庫)
と順調に(?) 読み進んできて、この
「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」 (宝島社文庫)
でいよいよ最後です。
隠し玉4冊の中では一番評判がよいみたいで、売り上げも伸びているらしく、もうすでに続編
「珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る」 (宝島社文庫) が出ています。
しかし、長いタイトルですねー。
副題を除くと、
「珈琲店タレーランの事件簿」 となりまして、
「ビブリア古書堂の事件手帖」 (メディアワークス文庫) を連想させます。
土地を鎌倉から京都へ移し、舞台を古本屋さんから喫茶店に変えるとこの本ができあがります、そう言いたくなるくらい似通っていまして、女性店主と男性店員の関係が、女性バリスタ(従業員)と男性客の関係に置き換わっていますが、日常の謎を女性サイドが解きつつ、二人の仲が進んでいく、というのも同じパターン。
「ビブリア古書堂の事件手帖」 シリーズの方は古書・本に関する薀蓄が単なる彩りを超えた意味合いを持っているのに対し、
「珈琲店タレーランの事件簿」 の方はコーヒーに関する薀蓄はさほど意味がない、というあたりが違いでしょうか。これは、もう、立派なエピゴーネン??
連作短編集のようなかたちをとっていますが、目次を見れば、第一章、第二章...となっていまして、長編として読まれたい作品のようです。
ということで、個々の軽めの日常の謎はそれなりだとして(あくまで、それなり、です)、女性バリスタ・切間美星と主人公の関係性が本書の最大の焦点ということになります。
好みの問題になりますが、この2人のキャラクターが好きになれなかったことに加え、あまり好きなラストではありませんでした。うーん。作者の狙った意外性の演出が、個人的にはマイナス方向に作用しました。この方向での意外性を目指すのであれば、視点のとり方とか人物の紹介の仕方とかを違ったものにしてほしかったです。
また副題の
「また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」 というのは、相応に考えられたものであることがわかるのですが、その意味をしみじみと味わう、というようにならなかったのが残念です。
ところで、「日本ではブラックといえば、砂糖もミルクも加えられていないストレートのコーヒーを指す場合が多い。アメリカを含む外国では、コーヒーの色がブラックであること、すなわちミルクの有無のみを表すのだ」(P95)って、本当ですか? 「アメリカを含む外国では」と日本以外(の英語圏)をぜーんぶまとめて言い切れるのでしょうか? イギリスでもそうだったかなぁ、と悩んでいます。
ここまでが3月に読んだ本です! ようやくここまで来ました。
次からは、4月に読んだ本の感想になります。