・神林長平著。
・第16回星雲賞日本長編部門受賞作。また、第15回星雲賞日本短編部門を所収の『スーパー・フェニックス』で受賞。
・突如南極に異世界との通路が開き、そこから異星人(『ジャム』と称される)の攻撃が始まった。人類はそれらを撃退することに成功し、30年後の現在では異世界へ進出して基地を建設、異星人の地球侵入を阻止するため戦闘を繰り広げている。彼らはフェアリィ空軍(FAF)。その中でも最新鋭機・スーパーシルフを駆る13機の偵察部隊、通称ブーメラン戦隊のトップパイロットが深井零中尉。愛機のパーソナルネームは雪風である。
・上記世界観をベースにした短・中編小説全8編
・1985年に発表された『戦闘妖精・雪風』を続刊『グッドラック 戦闘妖精・雪風』に発表に伴い改訂されたのが『<改>』。だから内容は1985年版とほぼ変わらない、らしい。
『FAF・特殊戦隊』
・イントロダクション。本作の世界観を、作中作『ジ・インベーダー』から抜粋することにより概説。
『妖精の舞う空』
・スーパーシルフ・雪風の戦闘と主人公、深井零の紹介。フェアリィ星について。
・ちょっと笑える、という意味での面白さがある。
・深井零、少尉から中尉に昇進。
『騎士の価値を問うな』
・おそらく本作の底流である、『人間と機械』についての思考が出てくる。
『不可知戦域』
・フェアリィ星の未知の領域に踏み込んだ深井零と同乗するジャーナリスト。
・本編の謎の物質が後編の伏線になっている。
『インディアン・サマー』
・巨大空中浮遊航空母艦の偵察に行く。
・心臓が小型原子炉の人間は、果たして人間なのか、機械なのか。
・深井零、泣く。物語で『泣く』シーンとしては、『寄生獣』で『胸の穴』が埋まった時に泉新一が涙を流したシーンくらい、感動的だ。
『フェアリィ・冬』
・除雪部隊の話。深井零がフェアリィ空軍のトップエリートだとしたら、除雪部隊は底辺扱いだ。
・コンピューターに翻弄される人間を描く。
・非常に切ないラストだ。作者の冷徹なペンが冴えている。
『全系統異常なし』
・雪風が零に、零は雪風に似てくる、という話。
『戦闘妖精』
・雪風が地球で戦う話。
・リン・ジャクスン氏、登場。
・スーパーシルフのカッコよさが存分に描かれている。そしてジャムの新兵器が忍びよる。
『スーパーフェニックス』
・新型機FRX99(無人機)とFRX00(有人機)開発譚。
・とうとう進化したジャム兵器が姿を現す。
・すっごく面白い。SF小説の肝は『世界観の完成度』だと思うんだけど、舞台設定、機械の描写、『機械とは、コンピューターとは、人間とは』というテーマ、作者の冷徹さ、どれをとっても素晴らしい。強いて言えば異星体ジャムがあまりにも謎として描かれているため、消化不良な感があるところくらい。でも続編で明らかにされていくのではないしょうか。そうであって欲しい。
以下続刊。『グッドラック 戦闘妖精・雪風』をお楽しみに!!
↧