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第十四章 来客編①武内華子  ~ そのいち ~

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今週末は、来客の予定がある。 その為、お酒の買い出しに商店街に来ていた。 箱買いで注文したビール類や、他の飲み物は配送するとして…ワイン3本…これくらいなら持って帰れるかな?と、酒屋のおばさんに「これは持ち帰ります。」言った所、物凄い勢いで止められた。 「あんた!身体弱いんだから、無理するんじゃない!これくらい、サービスするから、配送にしなさい!」 「あ…でも、これ位なら…大丈夫ですよ。」 早く持って帰って、ワインセラーに入れて置きたいし、今日、早速一本開けるかもしれないし…。 「そうやって、無理するから、入院するんだよ!」 「いやいや…。原因はそれでは無いと思うのですが…。これくらいは、大丈夫だと思うんですけど…。」 「やめときなさい」「大丈夫です」 …と、酒屋の店先で、しばらく押し問答している時だった。 バン! 「もういいよ!」 っと、斜め向かいの輸入雑貨「くろたけ」から、勢いよく女の人が出てきた。 どう見ても、その物音と様子から、ただ事ではなく、酒屋のおばさんと二人で、何事かとくぎ付けになって、その出てきた女の人を見ていた。 「あ」 出てきた女の人は、自分たちの行きつけの病院の、受付窓口のお姉さんだった。 そう言えば、先日もくろたけの店で姿を見かけたっけ。 酒屋のおばさんも、気づいたに違いない。 二人で、お姉さんが、プリプリ怒って、こっちに向かってずかずか歩いて来るのをばっちり見ていた。 彼女は、こっちに向かって歩いている途中で、私たちが誰なのか気が付いたが、当然、感情が苛立っているから、少しバツが悪い表情を見せながらも、軽く会釈をして、通り過ぎようとした。 その様子から、痴話ゲンカなんじゃないかと、私たちは察していた。 察していたと、思うのだけど…。 「ちょうどいい!」 酒屋のおばさんは、それを気にも留めない雰囲気で、彼女をすぐ引き留めた。 「あんた、身体も丈夫そうだし、近藤さん家に、これ、一緒に運んであげて!」  と、すっげータイミングで、引き留めた。  ええー!  と、私は酒屋さんを、目を見開いて見てしまった。  彼女も「え?」と思ったに違いない。  気を利かせたのか、気が利かないのか…。  酒屋さんからの、「どうにかしろ」のパスなのかもしれない。 「ほら、この人、か弱いのに、無理しようとするんだよ!家は、すぐ近くだからさぁ!頼むね!良かったね、近藤さん!」 そのタイミングの良さと勢いに、彼女と私は、乗るしかなかった。 「は、はあ…。」 「じゃあ…お願いします。」  彼女は、私の持っていたワインの内、2本持たされる羽目になった。  家の方に向かって、しぶしぶ歩く。 「ご、ごめんねーありがとう。助かったわー。」  酒屋のおばさん!丸投げすぎるわっ!  何となく、ご機嫌を解かなくちゃ…。 「私の家はね、その抜け道の坂を上がって行くと、すぐなんだ。車だと少し回らないといけないんだけど、歩いたら近いからー。」 「はあ…。」  彼女は、話しかければ適度に答えるが、とても楽しい雰囲気ではなかった。  当然か。  何があったの? と、まだ聞くわけにもいかないなあ…。 坂道を上がる。  ひいひい。  途中、話を聞こうと思ったが、会話どころでは無かった。  彼女に、ボトル2本分持ってもらって助かったかも…。 「お、重いけど…だ、大丈夫?」 「大丈夫です。」 彼女は苛立っていて、体力が余っているのか、平気そう。 彼女の方が、先導して歩く。  家々の間を抜け、ゆるやかな坂道を上がりきる。 「家、そこだからっ!」  「近藤」と表札の出た家の前まで着いた。  私はすっかりバテていた。 「はー…ひどい体力無いなあ…。」  と、笑って見せたが、それには関心なさそうに、彼女は遠くの景色を見ていた。 「…ここ、いい眺めですね…。」  高台のこの場所は、眺めが良い。    今日は、天気も良いし、気持ちの良い風も吹いている。  私は…息切れ切れ…何か飲みたい…。 「良かったら…、家で一休みしていかない?お礼も兼ねて。」  良ければ話も聞くし。今は、息が切れ切れだけど…。 「はあ…。」  彼女は、意外とすんなり応じてくれた。  家は、低い塀に囲まれている。  一般家庭の一戸建て…よりは、気持ち敷地は広いかな?…彼の実家の比には全く及ばないけど。 門を抜けると、玄関までのアプローチ。 手前には広めに造られた芝生と庭がある。 居間からは、この庭が見えるようになっている。 「どうぞー。何も無いけど。」  家の中に入ると、すっきりと…というか、何もない。 整理整頓、というより、物自体をあまり置いてないのだ。 我ながら、飾り気の無い、生活感の無いセンスだと思う。 そう、思われるだろうな…と、思うが、彼が、こんな感じでも気にしないでくれるので、彼デザインの、この部屋の造りを、存分に味わえるように(笑)殆ど何も置いていないままだった。 「素敵…ですね…。モデルルームみたい…。」  彼女が口を開いた。 「ええ!そう?嬉しいー!引っ越ししてきたばっかりだから何にも無いでしょー。」  ふふ…今は物を置いてないが、散らかし屋の私が、いつ反乱を起こすかわからないのだ。  今の所、地味な大人二人の生活は、そんなに物も増えない。    彼女は、キョロキョロ家の中を見ていた。  玄関を抜けて、居間に入った。玄関からの境目に扉は無い。 「わあ…」  見渡せる居間。  木目は明るい色調で、清々しい室内。   居間の部分は、地形の傾斜を利用して、段差を作って低くなっていた。  ソファーや、テーブル、奥にはテレビや暖炉。  居間には、庭が見渡せる、クリアな大きい窓。  そこから、居間と庭を出入り出来る。  一段下がっていて、全体が見渡せるのと、一面のガラス窓で、外が続いて見えるので、奥行きがあるように見える。  天井は低め。  この方が相手の話も良く聞こえて、落ち着く。 「どっちに座る?」  左側は居間。右側には、キッチンとダイニングがある。  キッチンの窓からも明るい陽射しが入り、居間よりも一段高くなっているキッチンダイニング側からは、居間と庭、そして庭の先の高台の景色を眺められる。  こっちは、シンプルな椅子とテーブルが配置されている。これは、「くろたけ」で購入した物だ。 「えーと…じゃあ…こっちで…。」  彼女は、ダイニングのテーブルを選んだ。   「主人の実家から教えてもらった紅茶が、劇的に美味しくて…私のお気に入りなんだけど…。紅茶飲める?」 「…はい。」  私はまず、水をぐびぐび飲んでから、彼女にはレモン水を出した。  その間に、ワインを保管したり、紅茶とお菓子の支度をしている間、彼女は珍しそうにキョロキョロ家の中を見渡していた。  …落ち着いたかなあ…。   異空間に来ると、感情も少し整理されるかな?と思って、中まで誘ってしまったが… 私、恋愛相談にはとても向いてないのよね。 場所だけでも提供できれば上出来かしら。


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