パリ郊外の原子力関連施設で技師長が殺害された。金庫からはパリの半分を破壊するに足るエネルギーを秘めた核燃料チューブが持ち去られており、しかも現場は完全な密室状態だったことが判明し…
こんな緊迫感あふれる導入部、タイトルも格好いいしこれは絶対スパイものか国際派サスペンスに違いないと思い込んでいたら、一方的な期待が見事にひっくり返されました。こんなお話を書いてるから、フランスのミステリはちょっとヘンなんていう偏見を持たれるんですよ。私に。
最後になってタイトルに隠された意味が腑に落ちる真相もさることながら、これはひと味違うと唸らされたのは捜査に当たるパリ司法警察警部の何とも頼りにならなさそうな雰囲気でした。終始状況に戸惑いながら、施設に勤める技師でもある親友と語らう姿が印象に残っています。だからこそ、クライマックスで真犯人を追い詰めるシーンが寄り引き立つ形になったのかもしれません。
そういう作品だとは思わないで読み始めたんですけれども、警察側の人間の苦悩が中心になった作品というイメージを持ちました。
↧
ボワロ&ナルスジャック『技師は数字を愛しすぎた』(創元推理文庫)
↧




