わしは長い年月をかけて実にさまざまな物語をつくってきた。そうじゃ、今でいうシナリオ・ライターみたいなもんじゃな。 大昔はひとつひとつ違う物語を綴ったものじゃが、世の中が整備され、システマティックになったおかげで、物語もある意味大量生産できるようになった。そのおかげでシナリオづくりも随分と楽になったものじゃ。その分、お話もつまらんようになったがな……しかし、それはええ。それはええんじゃ。 問題はいまじゃな。 その後、画一的だった人々の暮らしが面白みのないものじゃということに気づくものが現れてな、社会はどんどん個性化という方向に進みはじめた。人と同じことをするのはいやじゃゆうてな。そうなるとわしとて今までどおりにはいかんようになった。 個性化を求める者たちのために、またしてもひとりひとり違う物語を作らんならんようになった。そう、昔みたいにな。 しかしわしももう歳じゃ。もうアイデアが沸いてこん。能力の枯渇じゃ。 ああーどうしたもんか。こういうのをスランプっちゅうんじゃな。わしはもう駄目じゃ。もう多くのシナリオなど書けなくなった。もう、人間たちはそれぞれ好きに生きて好きに自分の物語を紡いでくれ。わしゃもう降りる。 いやいや、そうは言ってもまだこの場所は去らんぞ。 まだまだこの神の座を明け渡すわけにはいかんのじゃ。宇宙のシナリオを書き綴らねばならんでな。 了





