このまま、ほっこりと、このストーリーを、終えても良い位、幸せの真っただ中。
先日の彼の実家であった行事の後の事だった。
そこで出席者に配布された、(多分)高価なグラスを、お姉さんとその子供が届けてくれた。
(実家の催し物でグラスなんて配布される?)
本日は、彼と私と丁度二人でお休みを頂いていた日だった。
「ちょっとお邪魔するわね。お母様に持っていくように頼まれたのよ。あの日、あなたが、突然帰ったから、わざわざ届けに来たのよ。」
ははぁ…申し訳ない。と、二人で思うばかり。
お姉さんと彼は談話中。
あの方は何の関係の方よ。とか、どこどこの財閥が何だとか、全く会話に入れなかったので、
私は子供のお守りになった。
…この子が彼の後の、跡継ぎかぁー。
歳は十歳を満たない位。
綺麗なお顔立ち、素敵なお召し物で可愛らしい。
彼の性格がおっとりしているので、その甥っ子なら…と、子供は苦手だけど相手になったが、甘かった…。
「おばさん!」
ぐさっ!
「おじさまの婚約者なの?歳取ってるのに?」
グサッグサッ!
「おやつ?食べないもん!太るからダメだって言われる!」
「あっちの部屋に行きたい!」
「あの本見せて!届かない!」
「あの窓どうやって掃除するの?おばさん!」
!!!!
もー!!なんじゃこいつは!!
頭から湯気が出て来た頃、その湯気が見えたのか、お姉さんが遠くからその様子を見て、あきれて言った。
「ホント、小さい時のあなたにそっくり。あんたも落ち着きが無かったわねぇー。本当によく、ここまで成長したわよ。」
と。
「その節は、色々ご迷惑おかけしました。」
と彼は何の弱みを握られているのか、素直に認めた。
「へえ…意外…。」
そうかぁーそんな時代があったのかぁー。それならしゃーない。
と、子供に気を使うのを諦めた。
少々、相手をやめて、頂き物のグラスを開けた。
何処に飾ろうか考えていたら、私の気がそれた事に気づいて、あっちから寄ってきた。
「そのグラスどうするの?」
「ん?どこかに飾ろうかな?」
「飾るだけ?うちにね、こんなにいっぱいあるんだよ!もっともっと、いっぱいあるんだよ!」
…ハイハイ。自慢だね。
「そんなにいっぱい喋ってたら、喉乾かない?これで水飲む?」
「これは…お酒飲むグラスだよ!」
テーブルマナーしっかりしているなあ…。
「お水も飲めるんだよ。」
と、大人だけど、私も対抗した。
「ホント?」
だけど、お姉さんの躾の目が光っているので、適当な事を言うと怒られるわね。
「この家ではね、いいよ。他の所ではお母さんの言うことちゃんと聞いてね。」
と、グラスを簡単に洗って、彼がいつも飲んでいるミネラルウォーターを注いだ。
うむ。
美味しそうに飲んでいるではないか。
おとなしくなった。
そのあとは、二人で外の景色を見て「あれは○○の家だ」とか建物を説明されたり、奥の部屋で、持ってきていた絵本を読んであげたりして、少し仲良くなった。
小一時間ばかりであったが、お姉さんの「帰るよー」の一声で私の元から立ち去って行った。
が、玄関に見送りに行った時には、
「また遊びに来るね。」
と、振り返り言われると、何だか超浮かれ気分になった。
結構手を焼いたのに、
「また来てね。」
と、口が言ってしまった。
二人が帰宅後…。
「あー汗かいた。」
そんな、私の姿を見て、彼が後ろからきゅっと抱きしめてきた。
「?どうしたの?」
「ん?思い出したの。」
彼が甘えてきている。
「病気になってから、子供なんて考えて無かったけど、出来たら欲しいね。」
まあ。そんな嬉しい事言ってくれるの?あなただけではなく、私だって難しい問題なのに。
「出来たらね。」
と私も応えた。
あなたがいれば、私はどちらでも良いのよ?
「姉が、君と最初にあった時、子供は作らないでって、言っていたあの時…君はすぐ、産みますって、言っただろ?」
「はは…。今思えば、恥ずかしいくらい即答だったね…。」
「あの時、凄く嬉しかったんだ。」
と、彼が言った。
そうだったの?
「誰も、僕の子供なんて望んでないように思っていたから…すごく驚いて、でもすぐ君の言っている事が正しく思えた。」
それで、彼もあの時すぐ賛成してくれたんだ。
あの時を思い出して、笑った。
「…あの時、こうなると予測して無かったのに…よく即答したね、私たち。」
「本当だね。」
不思議な巡り合わせ。
入籍まであと少しの日の事だった。
↧



