2003年、再統一から13年を経た冬のベルリンで、頭部をヤギにすげ替えられた女性の胴体が発見される。続いてナイトクラブでは異様なヒツジの死骸が見つかり、ベルリン州警察のツォランガー警視正が捜査を開始。その頃、兄の自殺に疑問を持つ若い女性が手がかりを求めてツォランガー警視正を訪れていた…
この2つに加えてさらに別の事件が絡み、全く関係なさそうなそれらの間にだんだんと繋がりが浮かび上がる前半は実にじりじりさせられます。が、おぼろげに事件の輪郭が見え始めたかと思った途端、それまでの前提が全てひっくり返される事実が出てきて作者も登場人物も誰も信じられなくなってしまいました。後半はクライマックスまで二転三転する怒濤の展開で、休憩時間を削る勢いで読了してしまいました。
あくまでも中心になるのは現在のドイツで起きている事件であって、タイトルにある「消滅した国」の問題はそんなに絡んでこないのか…と思っていたら読み進めるにつれ、東西ドイツ時代からベルリンの壁崩壊、再統一を経て現在(作中では2003年)に至るドイツの情勢を背景にした物語であることが見えてきて呆然となりました。
インターネットを駆使して情報収集につとめる人々や女主人公に協力する外国人など、現代的でなじみ深い設定の中に出てくる中世の寓意画のメッセージのアンバランスさも正体不明の真犯人の不気味さを盛り上げています。読み終えると今(2013年)のドイツの現状にも興味がわきます、と書きますと現代史の参考書みたいになりますけれども、静かな警察小説の渋さとハードボイルドな空気を併せ持つ名作です。
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ヴォルフラム・フライシュハウアー『消滅した国の刑事』(創元推理文庫)
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