「いったいこれはどういうことなんですかっ!」
厳しい口調で追及されて直樹は一瞬ひるんだが、頭の中にひらめいた言葉に後押しされて胸を張った。
「なにを言ってるんだ。君は知らないのかい? 国会で決まった新しい法律のことを」
決まったばかりの特定秘密保護法はまだ、正式に法律になったわけではないが、無知な人間には既に有効だ。
「むやみに人の秘密を嗅ぎまわると、逮捕されてしまうんだぞ!」
直樹の妻にはなんだかわからないが、逮捕されるという強い言葉に圧倒されてしまい、夫に突き出したピンク色の小さな名刺を引っこめることしかできなかった。
了