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『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』読了(追記あり)

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 大塚英樹さんの、『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』を読みました。

続く会社、続かない会社はNo.2で決まる (講談社プラスアルファ新書)

続く会社、続かない会社はNo.2で決まる (講談社プラスアルファ新書)

  • 作者: 大塚 英樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 新書

 例によって、感想は、追記をお待ちください。

 

 

   追記・感想

 

 長いスパンのなかでは、企業は倒産したりしている。

 経営不振に陥っている企業は、ナンバー2を置いていなかった企業だ、と仰有る。

 

 ナンバー2とは、階層(ヒエラルキー)のなかでの社長の次のポストという意味ではな

い。

 社長の片腕として、会社内部の仕事のほとんどをこなす。ときには、社長に諫言を呈す

る。そして、社内の不具合を察知し、社員や部課長とのパイプ役もこなす。

 これが、ナンバー2なのだ。

 

 社長がたとえカリスマ経営者だったとしても、長い就任期間の間には、彼も変化してい

くのである。自社の本業とは関係ない株を大量に買って資本金を食いつぶしたりすること

もある。自社の強みの部分の事業を、コスト削減が目的で削減してしまったりする。こう

いう動きになっているときに、社長を諫めることが出来る人物。これがナンバー2である。

 ナンバー2の居ない企業は、長いスパンで見たときに、経営不振に陥っている。

 例外は、社長自身のなかに、ナンバー2が居る場合だ。自身の心の声として、自身を客

観視したナンバー2の諫言が常に聞こえている。(ユニクロの社長など)

 強力な指導者が事業を成功させ、企業を持続的成長へ導いて一世を風靡したのは197

0~1980年代のこと。【本文引用】

 いまの企業には、社員の背中を押す人が、きわめて少ない。まして、働く人たち一人ひ

とりの「人間作り」に荷担していくような面倒くさい仕事を、進んでやる人がいなくなっ

てしまった。いつのころからか、人を育て、人を鍛え、人を励ますことに無頓着になって

しまったところに、いまの日本企業の衰退の真因があるような気がしてならない。【本文

引用】

 社員が、皆、評論家になってしまった。トップからヒラ社員まで、「自分が率先して、

新しい仕事や困難な課題にチャレンジし、企業価値を上げるために貢献したい」と考える

のではなく、「いかにして自分が責任を取らされないような選択をすべきか」ということ

ばかり考えている。(中略)背景には、子供時代からの「ことなかれ主義」がある。(中

略)どんな勉強がしたいかではなく、どの科目なら試験で合格点が取れるか。(中略)つ

まり、子供時代から「ことなかれ主義」による消去法で安全パイばかり選択しているので

ある。【本文引用】

「どんな部にしたい、どんな会社にしたい、自分は何がしたい」という「What(目的)

がまるでなくて、「どのようにすれば」という「How to(方法)」ばかりなのである。【本

文引用】

 どうすれば、売れる商品を開発できるか。どうすれば、社員が活き活きとやる気を持っ

て仕事に取り組むようになるか。こういう問題のほうが、長い期間を見据えたとき、大事

な問題であるのに、工場の過剰設備削減や人員削減ばかりをやっているし、また、リスト

ラを断行する社長のほうが世間から尊敬されるような風潮が出来てしまった。

 自転車操業のところに、節約だけをしても、いずれは敗退するのである。個人で言えば、

小遣いを切り詰めることばかりしていても、収入を増やすということをしないと、結局は

閉塞してしまう。

 会社の業績が悪化しているときも、ナンバー2がいない会社では、本業と関連のない新

技術・新市場・新規事業での飛躍など、成功するかどうか検証されていない戦略に望みを

かけてしまうことが多い。一方、ナンバー2が存在する会社では、徹底した戦略分析と定

量分析に基づいて戦略を変更することになる。【一部本文引用】

 つまり、一か八かの賭けで、業績不振を乗り切ろうとする。少なくとも、賭けの部分は、

失敗しても経営に影響しない範囲に抑えておくべきなのだ。

 ホンダが、技術研究所の出身者が、経営陣に多くなりすぎたので、当時のナンバー2で

あった雨宮さんが、次期社長の吉野さんに、研究所の人間をしばらくの間、役員につかせ

ないよう進言した。というような策がある。研究所出身の者と営業畑出身の者との緊張関

係が、トップの経営チームには必要、と判断したからである。

 日産を再生させたカルロス・ゴーン氏の経営基本軸は、「収益性」と「モチベーション」

である。CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)を作らせた。経営不振、売上が伸び

ない、などの原因はどこにあるのか、どう改善していけばよいのかを考え、実行指示を出

すグループのことである。チームは若手を登用したが、いざ改善案の実行のときには、そ

れぞれのプロジェクトの長は、ベテランに任せた。ゴーン氏は、あれをせよ、これをせよ、

という直接の指示は出さないで、日産の社員自身(内部)から問題意識を挙げさせ、それ

に取り組むモチベーションを引き出したに過ぎない。複数つくったCFTの長が、ゴーン

氏に次ぐナンバー2だった(または、そうさせた)のである。いや、主役はCFTまたは

社員全員ということで、ナンバー2は、ゴーン氏自身だったのかも知れない。

 本文にも何度も書かれているが、改善は、トップにやらされている感を持って、さあ行

動しよう、と焚きつけても上手くいかない。ヒラの社員に至るまで、自分の会社なのだか

ら、世の中に誇れる会社にしよう、という自発的なやる気を持って、案を出し行動するか

ら企業は変わっていくのである。そして、そのためには、社員の心のケアも実行するトッ

プとのパイプ役、ナンバー2が不可欠なのだ、と。

 ゴーン氏のコンセプト。「顧客の要求はクロス・ファンクショナルなものである。コス

トにせよ、品質にせよ、納期にせよ、ひとつの機能やひとつの部門だけで応えられるもの

ではない。どんな会社でも、最大の能力は部門と部門の相互作用のなかに秘められている」

【本文引用】

 ゴーン氏が日産本社にやってきたときに最も驚いたのは、徹底した経費削減のために、

暗い照明、夏場なのにクーラーはあまり効かず、社員はチビた鉛筆をつかっていた。コピ

ー用紙は裏表使い切る。コピーの文字は判読できないほど小さかった。という現状だった。

 光熱費や事務費を節約したところで、何の効果もない。むしろ、やることなすこと社員

の気持ちを委縮させるだけである。もっと根本的なことを改めなくてはいけないと、CFT

のメンバーを集め始めたのである。【本文引用】

 ゴーン流のCFTのように「みんなでいっしょに何かをやること」は、もともと日本人

が得意だった。日本の農村には、地域の人たちが田植えをいっしょにするという文化があ

った。みんなで強力し合い、仲間同士が融合して気持ちよくひとつの仕事を成し遂げるよ

き習慣がかつての日本には根付いていた。高度経済成長時代に、こうした日本人の特性が

なくなってしまった。「みんなでいっしょに仕事をしよう、いっしょに問題に向き合おう」

という気持ちがなくなり、「みんなでいっしょに怠けましょう」というような状況に、い

つのまにかなってしまったのである。二度とそんなことにならないようにするためにもナ

ンバー2を育てなければいけない。【本文引用】

 あとは、ワコールが有名企業になった経緯なども書かれている。

 ナンバー2を育む条件、についても書かれている。

 たとえ現在ヒラ社員の身だったとしても、誰もが自社のナンバー2であるという意識を

持つべき、と書かれていた。問題意識をもって自社を改善しよう、業績を伸ばそう、とい

う意識である。

 トップも中間管理職も、平社員も、すべてが幸福であるべき。

 コンビニのファミリーマートは、業績改善のために、末端の店舗の店員からも随時、ア

イデアを募集していて、善いことと思ったことは個人の単位でも自発的にやってもらうよ

うにしているそうです。

 何が幸福かと言えば、全員がやる気に目を輝かせている状況。やらされているのではな

く、自発的にアイデアを出す。

 社長の首をすげかえただけでは、その企業の業績不振は改善しない。ナンバー2が出て

きただけでも無理。

 結局、ナンバー2が活躍することによって、企業の風土全体が改善されてくることが大

事なんだと思いました。

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