『スマホは捨てろ!』(鈴木進介著、扶桑社、2013年5月刊)
確かに、バスや電車の中で、バス停で、カフェで、スマホを片手に、惚けたような表情でスマホに見入っている、「老若男女」は、ハタから見るとバカそのものに見える。もはや、まっとうなビジネスマンは、その中に入っていないと私は信じる。本書の題名はすばらしい。それは、ビジネス書というより、上記の日本人すべてに「贈る」言葉だ。確かに、海外でもスマホの普及率は高いが、たとえばヨーロッパなど、駅などで、ほんとうに情報が必要な人が使用しているのであって、ヒマがあれば、場所を選ばず、ぼーっとスマホの画面を見つめながら、指をすべらせているのとは様子が違う。
本書は、市場価値を高めるためにサラリーマンが実践したり、目指したりしていた、英会話、ファイナンシャル・プランナーなどの資格試験、MBA(ハーバードなど、トップ10以外の)などが、すべて無駄であることを説いている。考えてみれば、あたりまえなことなのである。会社で出世できてない「あなた」が、それらの勉強だけで、市場価値が上がるわけがない。それより社内の価値を上げなさいと。
しかし、皮肉なもので、では、その通りだと、本書の通りやっても、抜きんでることはできないだろう。おそらく本書で定義されている「無難な人々」が、同じように動くからだ。
しかし、本書には、おそらく著者も気づいていない美点がある。それは、人間性への再認識への促しであり、絵空事のような「出世」に踊らされていた一時期のパラダイムの終わりを、「はからずも」告げているからだ。もしかしたら、題名は、編集者がつけたものかもしれない。「スマホは捨てろ」。そこのオジサン、オバサン。ついでに「つけ睫毛も捨てろ」。そこのエクステ睫毛のオネーサン、オカーサン。