飯田泰之・荻上チキ『夜の経済学』読了。各章それぞれに違った問題を取り上げているんだが、そういうこともあっていろいろな読み方のできる本である。
まず導入は「日本にフーゾク嬢は何人いるか?」「フーゾク産業の市場規模は?」みたいなハナシ。なんつーか下世話ではあるが実に興味深いデータを各種調査・統計やらフェルミ推定とやらを駆使して割り出してみました、みたいなパートで、ちなみに日本全国でフーゾク嬢は30万人ぐらいいるらしいぞ。
ま、そういうハナシを楽しんでいるだけでもいいんだが、これも実はつかみであって、そういうネタを通して数字・統計によってたつ経済学的思考(より広くいえばデータにもとづいた思考法ということにもなるのだが)の基礎を学ぶ本、ということもいえるのだった。じっさい下半身ネタばっかりじゃなくて、荻上チキ氏のパートでは流言・デマの社会心理学みたいなハナシもでてくるし。
そこでチト思ったのだが、この本、そういやこないだ読んだ 堀井憲一郎『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎』という本とも、どっか通底しているものがあるぞ。こっちは確か「週刊文春」の連載をまとめたものである。堀井氏はべつにアカデミズムの人ではなくて、統計学を知ってるともおもえんが、「郵便ポストの集配は時間通りにちゃんとくるか」みたいな、どーでもよい調査を延々とまとめたものであって、これもやはりそれなりに「データ主義」の本。やっぱり説得力があった。
とかく日本人は「今より昭和30年代のほうが良かった」「犯罪の凶悪化が進んでいる」とか、自分の思い入れにもとづく印象論でいろいろ世の中を語ってしまうところがある。ハッキリいうとオレも統計学の概念はイマイチわかってないけれども、そういうワケでこの『夜の経済学』みたいな、間口が広くて啓蒙的な本というのはもっともっと読まれていいと思ったなあ。
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