ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)
- 作者: テッド・チャン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: 文庫
評価:★★★☆
「SFマガジン」創刊50周年記念アンソロジーって銘打ってあるけど、
全部がSFマガジンに掲載されたことがあるってわけではない。
でも、「本邦初訳」とか「書籍初収録」なんてのも混じってるので
貴重といえば貴重なんだろうね。
全13編収録。
序盤の4編は「ロマンス編」。
たしかにタイムトラベルにはラブストーリーがよく似合う。
中盤の4編は「奇想編」。
時間SFのいろいろなバリエーションが楽しめる。
終盤の4編は「時間ループ編」。
「登場人物が繰り返し同じ時間を体験する」のは
時間SF定番のパターンの一つだが、いろいろな切り口の作品が集まってる。
そしてトリが表題作で、序盤と同じくラブロマンスもの。
オススメは、というか私の好みはやっぱりロマンスものに偏るなあ。
一押しは、本書冒頭の
「商人と錬金術師の門」(テッド・チャン)。
それをくぐることによって20年の時を跳ぶことができる、
不思議な金属の輪にまつわる物語の数々が語られ、
主人公もまた輪をくぐり、自らの後悔の念に決着をつけるべく、
20年の彼方へと向かうのだが・・・ラストが切なくて泣ける。
あとオススメなのは
「彼らの生涯の最愛の時」(イアン・ワトソン&ロベルト・クアリア)
人生の残り時間を計算するようになった人(私だ!)には、
この結末は沁みるなあ。いろんな意味で。
「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」(F・M・バスビィ)
身体でなく意識だけが、人生のあちこちの時点の自分に
跳んでいってしまうという話。
ラストはちょっと「これでいいのか?」って思ったが
すべてが丸く収まるんだから「これでいいのだ!」なんだろうね。
あと、
「限りなき愛」(クリストファー・プリースト)も捨てがたい。
ラストの切なさでは「商人と-」と双璧。
なんだかロマンス編ばっかり挙げてしまったが、
その他のテーマものも総じてレベルは高いと思う。
どれも充分楽しませてもらった。
唯一、
「夕方、はやく」(イアン・ワトソン)
だけは、よく分かりませんでした。ごめんなさい。