著者は「高度経済成長とともに育った世代」。「成長とともに世の中がどんどん豊かになり、周りに」ものが増えていくのを見てきた。「家で炭火や薪火が使われていたのを知る最後の世代」で、「小学校に入る頃まで、炊事には七輪が使われ」「小学校高学年まで風呂は薪で焚いていた」。 また著者は、急激な経済成長とともに公害の発生、蔓延を経験した世代でもある。就職先の石川島播磨重工業(株)では、「産業廃棄物装置の開発に携わ」ることになる。そのようにして、経済成長の正・負の両面を見るなかで、「文明の発達と環境破壊の歴史に興味をもつように」なる。そして、教職に転職してのちは「環境工学」を教えてきた。(専門は、環境化学・環境プロセス工学)。 著者は、いう。「長年、エネルギーと環境に関わってきた者として、火が人にもたらしてくれた恩恵と、それを使う側である人の身勝手な振る舞い、そして将来の人と火との関係について考える端緒になればと、筆を執った。人類の持続可能な発展が模索されているときに、少しでも多くの人に読んでいただき、これからの人間社会と地球の自然や生態系との関係について考えるきっかけにしていただきたい」。 以上は『あとがき』に記されたものを抜粋しつつまとめた。実際に読んでの印象は、たいへんスケールの大きな観点から、火をめぐる世界・日本の歴史、文化、習俗などなどが、項目ごとにたいへんコンパクトにまとめてある。評者にとっては未知のことがらも多く、興味深いものであった。 (以下、目次) 序章 第1部 暮らしと火 第1章 生活の中の火 火の使い方と炉の発達 日本の炉 灯火 採暖(暖房器具 / 住宅) 発火法(古式の発火法 / マッチ / ライター 第2章 火と神様 火の神格化 火の神(日本の神様 / 囲炉裏と竈) 世界の竈の話(ギリシア / ドイツ / 中国 / モンゴル / 竈の改良) 火と宗教 火の儀礼(火祭り / 死と霊 / 火の習俗) 第3章 戦いの火 神灾(シンサイ)人火 火の武器(銃器 / 大砲 / 火薬爆弾 / そして原子爆弾) 第4章 ものづくりの火 木炭 土器、陶磁器とガラス(土器と陶磁器、ガラス) 銅と鉄(銅の精錬 / 鉄の精錬 / 古代中国の鉄と製鉄 / 古代朝鮮の鉄と製鉄 / 石炭の使用と産業革命) 錬金術 第5章 日本の鉄文化 中世以前の鉄文化(大陸からの伝播 / 伝説に見る鍛冶 / 民衆と鉄 / 鋳物技術 / 武力への利用) 江戸時代の鉄と蹈鞴製鉄 近代製鉄の幕開けと鉄文化 戦争による鉄需要 第6章 エネルギーの火 動力への変換(産業革命以前の動力 / 蒸気機関 / 内燃機関 / ガスタービン) 原子の火(放射線の発見 / 発電) 電気への変換 第7章 現代の火と未来の火 現代の火と環境問題(火の社会的依存 / 火の利用と環境問題) 未来の火 第2部 人類と火 第8章 火の使用と文明化 火の使用の考古学的証拠(火の痕跡 / 火を使用した遺跡の広がり / 炉の出現 / 寒冷地への適応 / 土器の発達) 火を使用する前の人類の足どり(二足歩行を会得した時代 / 道具の発明と狩猟採集生活の始まり / 生活史の改善 / 脳の発達) 火を囲む生活 調理の恩恵 象徴的表現能力の開花 集団の組織化と文明化 火の使用と森林破壊(都市の発達と森林破壊 / 中世ヨーロッパの大開墾時代) 第9章 日本の先史時代 縄文時代以前の足どり 縄文時代(食糧 / 生活様式 / 住居) 弥生時代(集落 / 鉄器 / 墓と葬送 / 統治の手段としての信仰) 古墳時代(国家の成立 / 古墳 / 製鉄 / 大陸文化の受容) 中世以降と森林の利用 終章 あとがき 参考文献 索引
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