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貴族探偵

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「彼らは私の所有物である以上、 推理などというくだらないことは、 彼らにやらせておけばいいのです。」 自らを「貴族探偵」と呼び、 非常に頭の切れる執事とメイドがいて、 さらには運転手、ボディガード。 やんごとない身分の御方とだけしかわからず。 安楽椅子探偵ならぬ、まさに貴族探偵、ついに文庫で登場。 本作品は貴族探偵という「探偵」が自らの 所有物である執事やメイドに事件を解決させる、 というなんとも奇妙な物語。 以下、ややネタバレになりますので、未読の方は注意。 一方で、所収作の事件はどれもこれでもかと 読者をうならせてくれるでしょう。 ウィーンの森の物語、ではもう古典的ともいえる 糸のトリックを用いた密室を作り上げるという手の内を 読者に見せつつも、それをむしろミスリードとして 用い、さらに最後の解決編では、合鍵を持っている、 持っていないのさらに先まで進めた論理が見事です。 トリッチ・トラッチ・ポルカでは 切断した人体を用いたアリバイトリック。 ただ、このトリックはその時間にアリバイのない者が 犯人である、という、容疑者を絞った上でではなく、 アリバイを絞る事で犯人を浮かび上がらせているところが おもしろい。 加速度円舞曲では唯一物語の中に図が挿入されます。 なぜ富士の岩が落ちてきたのか? それが事件の謎を解き明かす最大の鍵なのです。 春の声、では貴族探偵の正体を知る桜川という人物が 登場し、少しは彼の正体が・・・と期待したが駄目でした(笑 明かされる真相はありえるのか?と思いましたが、 それ以上に、主人公の皐月と貴族探偵の会話に 僕は注目しました。 事件にはノータッチですが、彼は皐月との会話で それなりの推理や考えを述べているのです。 まあこれを推理とは言えないのかもしれませんが・・・ (つまり上流階級に身を置く者にとっては当たり前ではないか) さて、本書最大の問題作というか、僕は3度読みなおした(笑 あまりに見事だと感じたのが「こうもり」 これはもう読んでもらうしかありません。 使われているトリックは単純なものなのですが、 小説という媒体を非常にうまく使っています。 このトリックをここまで昇華させたのは素晴らしいの一言に尽きる。 そしてラストに明かされるのがまた衝撃の事実です。 続編も早く文庫化してほしいけれど、まあ先は長そうですね。
貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫
貴族探偵対女探偵

貴族探偵対女探偵

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 単行本

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