ショートショートの神様、星新一の伝記です。
前半は幼少時代というより、星新一の父である星一について厚く書かれています。新一は父の会社を譲り渡し、人間不信になりながらもSFにのめり込んでいきます。
後半はデビューしてからの新一です。
ものすごい勢いで人気作家への階段を駆け上がり、SFの代表とみなされながらも、純文学を尊ぶ文壇からの評価は低く、賞からは縁遠い日々。
盟友だった小松左京や筒井康隆が賞を獲得し、いつしか星新一からSFの代表の座を奪っていく。
星新一はひたすらショートショートを書き続けるが、ネタに苦しみ、子供が読むものという文壇からの評価にひがみ、幼少期からの人間不信が悪化する。マンネリを意識した星新一は、歴史物を書いたり、父や祖父の伝記に取り組んだりと、新しい境地を開拓しようともがくが、商業的には成功しない。
作者が苦しむ一方で、ショートショートは売れ続け、熱狂的ファンの存在が崩れそうな星新一を支えていく。
そして、一〇〇一話達成という新しい目標に向かって、まさにもがくようにして、原稿用紙の升目を埋めていく。
第一線に立ち続ける苦しみが、ストレートに伝わってくるような伝記です。今後、必ず現れると思われる星新一研究に欠かせない一冊になると思います。
もちろん、一ファンにとってみても。
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