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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第42回)

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「……ということで、先生のおっしゃったように、来訪者があったのも、そのために二人が席を立ったのも、まぎれも無い事実のようです。 でも、よく分かられましたね、唐沢が言ってたこと、これで腑に落ちましたよ」  毛利は納得したのか、穏やかな表情になっていた。 「ところで、先生、できたら、一度本部の方にお越し願えませんか? 本部では正面橋事件も含めて色々、ご相談したいこともございますので、ぜひ」  毛利はそう言って佑太の表情を窺った。 佑太は広隆寺でのお告げのことが気になり少し迷ったが、毛利の申し出を受けることにした。 佑太たち二人と唐沢は、毛利の案内で映画村をあとに京都府警の車で上京区にある府警本部へと向かった。  京都府警の庁舎に入ると、佑太たちは刑事部捜査一課の課長室に通された。 部屋には課長の桜井が待っていた。  桜井は五十前後の背の低い小太りの男で、肉づきのよい顔に似合わず、眼光は鋭かった。 「課長、こちらが安藤先生です。 安藤先生、私の上司の桜井課長です」  毛利の言葉で、桜井は笑みを浮かべ、頭を軽く下げた。 「私、ここの捜査一課で課長をしております桜井と申す者でございます。 この度は、毛利が、たいそうお世話になりまして。 先生はプロファイリングの達人やと毛利から聞いておりますが、なにぶん事件が大きくなりましたので、今後ともよろしゅうお願い申します」  桜井課長は慇懃に挨拶した。 捜査への佑太の参加に関して、桜井と毛利の間では、すでに話がついているようだった。 「こちらこそ、お世話になります。 僕は、元々、帝都警視庁で嘱託医をやっていたのですが、ある事件がきっかけでプロファイリングをするようになりました。 こちらで、どれくらいお役に立てるのか分かりませんが、できる限りの協力は、させていただきます」  佑太の言葉に、桜井の顔は、さらに和んだように見えた。 「課長、安藤先生のお父様は、元警察庁長官の安藤総一郎様でして……それから奥様は、あの安田財閥のお嬢様です。 安藤先生の双子のお兄様は、帝都地検で検事をしておられまして、セレブ、エリートのご家系の方です」  毛利が佑太の一族の話を披露すると、桜井は納得するように頷いた。     「それは、たいそうご立派なご家系で。 では、お連れの方が……奥様で」  桜井は杏子の顔を見た。 「はい、安藤の家内でございます。 よろしくお願い致します」  杏子は腰を折った。 「さすがは安田財閥のお嬢様、ほんまに上品で、お綺麗でいらはりますな。 うちのかかとはえらい違いでんがな。 で、そちらの、えろう味のあるお顔をした方は?」  桜井は唐沢の顔をしげしげと見た。 「ああ、こいつですか? こいつは、私の大学の後輩で、帝都警視庁刑事部捜査一課の敏腕刑事、唐沢信吾です。 ついでに連れてきました」  毛利の言葉に、唐沢は不満げな顔をした。                                       続く


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