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永山則夫   堀川惠子   岩波書店 

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          永山則夫 封印された鑑定記録

 

 

 

 慄然とした。4歳で寒い厳寒の中に捨てられた子供がどういうことになるか、しかも捨てられた中に年端もいかない妹や姪もいたという。

私が4歳の頃といえば記憶もないし、その頃母親に捨てられたといえば、その後どんなにして生きていたのだろう。よく小学校や中学校も出られたものだし、学校にもほとんど行っていないという。先生も関わりたくないようだ。しかも兄や姉に対して口答えも出来ず、抵抗すら出来ない。ボロを着、人の捨てたものを食ったりしたのだろう。彼はだれからも愛されることなく死んでいったのだ。

しかも彼は偶々忍び込んだ家でピストルがあり、それによって人を4人も殺したことが死刑になる要因だった。ピストルがなければ彼は従来どおりの極貧の生活のままであり、相変わらずその兄弟に苛められていただろう。

家庭の貧困というより、その両親の無責任さに呆れるばかりだ。だが彼の母親はもっと悲惨な中で育っている。私は石川義博先生が唯一彼の心の闇を暴いたように思える。彼の犯罪もその両親のせいだといえなくも無いと思う。

彼に比べれば私は随分恵まれた環境の下に育ったものだが、私が大学に行っていた頃と全く時代が重なり、自分が背が低く、貧乏だと思っていた。しかし、親の愛はそれなりに受けていたようだ。


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