今の若い人には馴染みがうすいだろうが、グラフィック・デザイン、イラストレーター、映画監督、エッセイスト、作詞・作曲も手掛ける多才で幅広い分野で活動している。
この絵本は、彼にとって最も初期の〈幻の絵本〉といわれている貴重な絵本! 近年、リニューアルで発刊されているようだ。
和田誠※「ぬすまれた月」
発行所 岩崎書店 1963年7月発行 〈ポニー・ブックス〉シリーズ6
和田 誠(わだ まこと)
1936年生まれ。グラフィック・デザイナー。日宣美賞、東京アートディレクターズクラブ銀賞などを受賞。日本宣伝美術会会員。主な絵本作品=「21頭の象」「みつばちぴい」など。 ※同書より引用
読者のみなさんへ (同書カバーより原文引用)
空にむかって、たくさんのロケットが、うちあげられています。ぼくたちが 月に旅行に行くことも、夢では なくなりました。
けれども、月はやっぱり たかいところでかがやいていて、ぼくたちに いろんな、たのしい夢を みせてくれます。この本は、ぼくたちの手が 月にとどくより前の、そういう〈おとぎばなし〉の一つです 和田 誠
どこの国でも〈月〉は きれいなことば。
11p- ここにもひとり 月が だいすきな男がいた。
やがて 男は決心をする。
12p 男はつくった。 長い長いはしご。
13p- はしごは ついに月にとどき 男は 月をもって帰った。
14p 男は月を箱にかくして ときどきとりだしては ながめていた。
21p- ほそい みかづきを みつけたのは
ひとりの 女の人だった。
22p 女の人は 月で たてごとをこしらえた。
それは すてきな音がした。
女の人のうたも すてきだった。
だれも きいたことのない 音楽だった。
23p-24p たてごとと、女の人と、その音楽は
たちまち 大ひょうばんになった。
遠くからも 大ぜいの人がやってきた。