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林望 謹訳 源氏物語(3) 若紫

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源氏系図.jpg
 
 「帚木三帖」が終了して、次は「若紫」。1帖づつ光源氏に入れあげていると、blogを50回更新することになりそうです。個人的には、源氏の無節操な女漁りには反感を覚えるのですが、小説としてはけっこう面白いです。美童美男で皇子という超人的な源氏も、それなりにスキを見せたりで人間的な魅力があります。「色好み」だけで54帖続けるわけはないでしょうから、歳を重ねて源氏はどう変わるのか、これにも興味があります。

 源氏18歳の春、瘧病(検索すると、マラリヤのことらしいです)にかかります。。加持祈祷のために北山の寺に向かいます。源氏は、この寺の参道に小柴垣をめぐらした庵を見付け、そこに出入りする女性を認め、あそこに住んでいるのは誰?。病気も少し良くなるとコレです。いつもの惟光を連れて、得意の「覗き見」に行くわけです。
 この庵で源氏は10歳ほどの美形の少女「若紫」と出会います。この少女に目を付けたわけは、

じつは、源氏が限りなく胸を焦がして思い続けている「藤壺の御方」、〈あの方に、瓜二つの顔立ちのゆえに、自然に目を引かれてしまうのだな〉と思うにつけても、はらはらと涙が落ちた。

さても、さても、かわいらしい女の子であったな。誰であろう、あれは。瓜二つの「あの……藤壺の御方」の代わりに、毎日毎日私の心の慰めとして手元に置きたいものだが……

 ちょっと動機が・・・とも思うのですが。源氏18歳、少女10歳、8歳の差は5~6年もすれば当時の適齢期になりますから、危ないものです。やがて、寺の僧都から、少女は藤壺の兄兵部卿の宮の子であることを聞き出します。兵部卿の宮が少女の母親のもとに通って出来た子供で、その母親は既に亡く、祖母の尼君によって育てられています。
 源氏も幼くして桐壺の更衣を亡くしていますから、同情したということもあるのですが、藤壺の姪と聞いて源氏は俄然やる気を出します。僧都を通じて尼君に少女援助を申し出ます。

いや、ともかく決して世の男どものような色めいた心で申すのではございません

 ウソ言え、ですね。尼君に直接頼んでもつれない返事。何しろ色好みで有名な源氏ですから、信用されないわけです。なんとか少女を貰い受けたいと歌のやりとりを繰り返えし、少女には「結び文」にしてこれも歌を送ったりするがのですが、尼君からは色好い返事は来ません。こういう時は「惟光!」ですが、惟光の才覚と弁舌をもってしても駄目。

 と場面は一転して、件の「藤壺」です。藤壺は病気で後宮を出て里に帰っています。源氏はチャンス到来とばかり、藤壺近侍の女房、王命婦に手引を頼み、強引に藤壺の閨に侵入して思いを遂げようとします。

藤壺にとっては、あのいつぞやの夜の思いもかけなかった過ちを、思い出すだけでも身も世もあらぬ懊悩の種であるのに、せめてはあの一夜っきりで終わりにしようと固く決心していたにもかかわらず、ここにまたこうして、罪を重ねてしまった、そのことがひたすら辛くて悲しくてどうにもならないのである。

 源氏は、「後朝の文」を王命婦に託しますが、開封さえしない様子で、空蝉に続いてまたもフラれたかと源氏の懊悩は深まります。空蝉も(藤壺の場合は正式な妃ではないが)藤壺も人妻ですから、貞操?と源氏の間で揺れに揺れ、最終的にはモラルを取るわけです。・・・と、事件が出来します。藤壺が妊ります。女房たちは、源氏が忍んできたことを知りませんから、桐壷帝の子供だと信じていますが、手引をした王命婦には源氏の子供だと分かるわけです。さすがの源氏も、今度だけはこたえたようです。父親の女に手を出して妊娠させたわけですから、これはまずいです。おまけに、父親は帝ですから。

 で、話はまた若紫に戻ります。若紫の祖母、尼君は北山から都に降りてきて病をやしなっています。これを聞いて源氏は若紫目当てに尼君の見舞いに行くのですが、懲りてませんねぇ。とこうするうちに、尼君は亡くなります、若紫は当然父親の兵部卿の宮に引き取られることになるのですが、若紫の乳母などは、宮の正妻にイジメられやしないかと心配しています。これにつけこんで、

源氏は、廂の間と母屋を隔てる御簾のすぐ向こうに紫の君が座っているのを感じて、その御簾の内側にずいと手を差し入れ、その体を探ってみた。 着馴れてやんわりとした衣に、髪はつやつやとかかって、その毛先のふさふさしたあたりまでぬかりなく探り当てる。源氏は、その髪のすべてを撫でさすりたいようないとしさを覚えた。

う~ん、犯罪一歩手前(笑。驚く乳母に

こんな幼い子どもを、いくらなんでも私がどうするとお思いなのでしょうか。私はただ、世にもたぐいのない私の深い愛情のありようを、ちゃんと見届けていただきたいだけです

愛情ねぇ。

姫君は、もう恐ろしいばかりで、いったいなにがどうなっているのかと、ぶるぶる震えている。そのため、たいそう愛らしい肌にもぞっと粟立つ思いがしているのを、源氏は、かわいいものだと思う。そうして、単衣ただ一枚だけで姫君の体を押し包んで、我と我が身ながら、〈いくらなんでもちょっと非常識かもしれぬ〉とは思わぬでもないが、それでもしみじみとした調子で、そっと語りかけるのであった。
さあ、こっちへおいで・・・

もう犯罪?。源氏はこれ幸いと若紫を自分の邸に拐ってきます。これはもうハッキリと犯罪。

 夕顔の死にも、藤壺の懐妊にも懲りず、今度は10歳の少女を拐ってきて、自分好みの女性に飼いならそうというわけで、源氏の色好みは止まることはないようです。

 第1巻終了。

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