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株式会社の終焉

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株式会社の終焉

水野和夫/〔著〕
出版社名 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年月 : 2016年9月
ISBNコード : 978-4-7993-1964-2
税込価格 : 1,188円
頁数・縦 : 239p・18cm


 近代の創出した株式会社という仕組みは21世紀に終焉を迎える。グローバル化の進展により「無限の空間」がなくなり、それに代わる「電子・金融空間」での利潤は、社会の発展に貢献しないからだ。
 これからは、ゼロ成長に見合った新たな社会を目指していかなければならない。

【目次】
第1章 株高、マイナス利子率は何を意味しているのか―「資本帝国」の株高vs.「国民国家」のマイナス金利
 国家と国民の離婚
 政府のROE8%超要請
 人件費削減に正当性はあるのか
  ほか
第2章 株式会社とは何か―「無限空間」の株式会社vs.「有限空間」のパートナーシップ
 「世界で最も重要な組織は会社だ」
 古くて新しい法人vs.中世イタリアのパートナーシップ
 最初の株式会社モスクワ会社と国王の事情
  ほか
第3章 21世紀に株式会社の未来はあるのか―より多くの現金配当vs.より充実したサービス配当
 成長、それ自体が収縮を生む
 バブルが多発する「電子・金融空間」
 ショック・ドクトリンと無産階級の増大
  ほか

【著者】
水野 和夫 (ミズノ カズオ)
 1953年生まれ。法政大学教授。77年、早稲田大学政治経済学部卒業。80年、同大学大学院経済学研究科修士課程修了後、八千代証券(国際証券、三菱証券を経て、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。三菱UFJ証券チーフエコノミストを経て、2010年退社。同年、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)。11年、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)。12年、退官。

【抜書】
●ブレクテアーテ(p59)
 1150~1350年ごろは、中世ヨーロッパのビジネスの黄金時代。カテドラル(大聖堂)が各地につくられ、巡礼者が数多く訪れた。
 封建領主たちは、日常的な取引や売買に使う目的で独自の通貨をつくり、領内に流通させていた。銀の板に刻印をした貨幣。6~8か月ほど流通したら回収され、新しい貨幣を再流通。その際の価値は、旧貨幣100円に対して新貨幣97~98円。1年に換算すると3~6%のマイナス金利。あるいは、地方所得税? 見えない税金。
 こうして集めた金で作られたのが、各地のカテドラル。

●徴税権(p62)
 近代国家である日本は、「租税法律主義」という考え方のもと、徴税権は議会にある。
 しかし、日銀は、国会の議決を経ずに、マイナス金利という実質的な税金を取り始めた。日銀には徴税権はないので、越権行為である。

●国民国家vs.資本帝国(p67)
 20世紀までの金利と株価は、国民国家の「景気」を反映して動いていた。
 しかし、21世紀になると、株価がみているのは「資本」である。20世紀末に誕生した「電子・金融空間」をホームグラウンドとする資本帝国。
 利子率が見ているのは、近代の「地理的・物的空間」に立脚する国民国家の経済。
 金利と株価の乖離。
 円高・株高政策を採用するアベノミクスは、「資本帝国」の政策である。

●モスクワ会社(p83)
 1555年、イギリスの国王メアリーⅠ世によって、モスクワ会社という株式会社が設立された。モスクワ大公国との貿易の独占権を得る「特許会社」。
 モスクワ会社は、「株式共同資本で交易した最初の法人」。
 特許会社……特許状に加え、中世から引き継いだ二つの概念に基づいている。①自由市場で売買可能な株式。②有限責任。二つの概念は、いまの株式会社の概念となっていく。
 モスクワ会社と東インド会社(1600年設立)は、永続資本だった。

●ザ・セイホ(p108)
 1985年のプラザ合意で、円とマルクを切り上げた。
 日本のザ・セイホは、米国債を購入することで、米国の赤字国債をファイナンスしていた。日本の貯蓄は、生命保険会社を通じて、米ウォール街と米財務省へ、そして最終的に米軍需産業へ、流れていた。
 しかし、プラザ合意でドル安になることでザ・セイホが巨額の為替差損をこうむっては、米国債を購入することができなくなる。そこで日本政府が国策として、土地・株式バブルでザ・セイホの株式含み益をかさ上げする必要があった。それが、アメリカの要請による日本の官製バブルの真相。

●オリーヴィ(p116)
 ピエール・ド・ジャン・オリーヴィ、1248-1298。現代の資本の概念に近い考え方をした。
 資本を「所有者がなんらかの可能的利益を生み出すために用いようと固く決意しているもの」と定義。そして、この定義のもと、「『決意』や『目的』によって『資本』と化した貨幣が、あたかも『種子のごとく』生む利益であれば、たとえそれが現時点では存在せず、将来において見込まれているものであっても、それを売買することは正当な行為であり、したがってコンメンダ(=投資貸借)による利益取得も正当である」と主張。
 教会が利子を認める際、正当化する理論となった。

●中世(p120)
〔 今起きているのは、近代の拠って立つ前提、すなわち「無限の空間」を21世紀のグローバリゼーションで前に進んできた結果、これ以上広がらないところまで到達してしまったということです。
 したがって、わたしたちが対話すべき過去とは、アジアにまだフロンティアがあった1930年代の「世界大恐慌」ではなく、「閉じた空間」だった中世なのです。オリーヴィが中世から800年を経て、現在の舞台に呼び戻されたのは、中世と対話しろというメッセージだと考えるべきです。〕

●電子・金融空間(p132)
 貨幣と企業は、「不確実性とその源泉」である。貨幣が安定していなければ、企業は、「地理的・物的空間」の膨張、すなわち市場の拡大に専念できない。ドルが金の裏打ちを喪失した1971年から、「地理的・物的空間」において付加価値を増加させることが難しくなった。
 明日の貨幣価値が分からなくなったために、資本主義は市場の拡大以外のことを考えなければならなくなった。そのため、金融の自由化の元に「電子・金融空間」が創出された。

●近代の3つの原理(p133)
 より速く……1820年以降、蒸気の力を得て「鉄道と運河の時代」がスタートした。
 より遠く……大航海時代に端を発する。
 より合理的に……科学革命が推進。

●立ち止まる(p158)
 〔過去の歴史的経緯をたどっていくと、20世紀の「技術の時代」は17世紀の「科学の時代」からの累積によって築かれたことがわかります。シュミットが16世紀から20世紀のそれぞれの世紀を特徴づけたように、今なすべきことは、21世紀はどんな時代かをまずは立ち止まって考えることです。走りながら考えると、過去4世紀の慣性、すなわち、「より速く、より遠く、より合理的に」が働いて、ITを切り札にした第4次産業革命にすがることになります。
 21世紀は「より速く、より遠く、より合理的に」を追求する「技術の時代」ではありません。21世紀が引き続き「技術の時代」だと信ずるのであれば、少なくとも「よりゆっくり、より近く、より寛容に」を目指す技術でなければなりません。
 マイナス金利とは、立ち止まって冷静に考えなさいというメッセージなのです。〕

●債務国家(p169)
 債務国家……「現実にはまだ存在していない金融資源の投入によって社会的紛争を平和的に解決することを可能にする」国家。金融資源とは、日本の場合、966.8兆円の国債。米国の場合、サブプライムローン、学生ローン。
 「租税国家」から「債務国家」への意向は、1980年以降、先進国共通の現象。1970年代に近代システムが機能不全に陥ったにもかかわらず、歳出・歳入構造が時代の変化に適応しきれていない。
 米国は、1980年以降、「債務国家」となった。国家債務の負担が大きくなると、債務は家計に移し替えられていった。「新自由主義」、「ショック・ドクトリン」(惨事便乗型資本主義)。

●ゼロ成長(p174)
〔 今の日本は、資本係数は世界最大、自然利子率はゼロです。資本が過剰に積み上がって、コンビニエンスな社会、すなわち、いつでもどこでもほしいモノ・サービスが手に入る社会を築いたわけですから、成長を目標にすればその反動のほうが大きくなるはずです。
 ゼロ成長が長期化すれば、国債は利息を生まなくなります。預金者は事実上、ゼロ金利永久国債保持者、もっと極端に言えば、国家に対する出資者となります。
 出資者へのリターンは国家の行う社会保障関連サービスや教育です。日本国家は現金配当をやめて優良なサービス給付国家に変わっていくことを求められているのです。〕

●資本の帝国(p182)
 「資本の帝国」とは、一級市民の株主と二級市民の預金者から成る階級社会。
 国民は平等であるという近代の理念に反するという点で、「反近代」であり、反動勢力。

●エラスムス(p215)
 「より寛容に」は、「より合理的に」の反対概念。
 16世紀は、寛容主義者エラスムス(1466‐1536)の時代と言われていた。カトリックからもプロテスタントからも尊敬を集めていた。しかし、彼をしても三十年戦争を避けられなかった。
 近代合理主義も限界に達した今、私たちがよりどころとすべきは、エラスムス。
 合理性とは、少ないインプットと多くのアウトプットを求めること。それが、人口減とイノベーションの低下を招来している。

(2017/1/4)KG

〈この本の詳細〉
honto: https://honto.jp/netstore/pd-book_28047647.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033507832


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