大粒の雨が窓ガラスに強く叩きつける。店の中いても、じわっと肌に纏わりつく。きっと、空調が効いていないのだろう。
束の間の雨しのぎにくぐった、かなり年季の入った喫茶店。私と同様な人と若者たちで、窓際の席は埋め尽くされていた。
今時レコードをかけてくれる店は少ない。私はカウンター席で邪魔にならほどのノイズがかった、懐かしいジャズの調べを聴いている。
気心知れた客のようだ。「今日は繁盛だな」 「雨の日だけじゃ、商売にならない」とマスター。「ほら、そこカップル。下向いてもじもじしているかと思えばずっとスマホだ!」
「雨の日デートといえば映画だったよね」と急に私に同意を求めてきた。「そ、そうですよね」と私。「お客さん、スイマセン。この人いつもこうなんです」 マスターは頭を下げ、奥のキッチンへ入る。
「何が悪いんだ。こうして席を同じくしたのも一期一会ですよね。ああ見えてアイツ、昔はビックマウスだったんです」と、常連客らしい男の話は続く… <つづく>
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