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「ゴドーを待ちながら」再読

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白水社から1983年にUブックス・シリーズがスタートしたときに、この作品も即ラインアップされると思ったのですが、期待は裏切られ… 誰もから忘れ去られた(?)本年、2013年になって、ようやくUブックス版の登場となりました 白水社にとっては看板のような作品なので、なるべく単行本で売りたかったのでしょう(笑) で、今回の記事作成のために、一応、ベケット生誕100周年記念記事も見直してみましたが… そんなにとんでもないことは書かれていなかったので、一安心(笑) 以下に、引用しておきます サミュエル・ベケットは、アイルランド出身のフランス語作家(詳しくは、こちら) 代表作は、もちろん不条理劇「ゴドーを待ちながら」 En Attendant Godot ということになりますが 二人の男が道端でひたすらゴドーを待っているだけ、という物語性を完全に拒否した展開 とぼけた二人組のやりとりが延々と続きます それも、初めは掛け合い漫才のように軽妙ですが、いつまでも現れない客人…そして自分たちの身動きのとれない状況のせいで、いつしか悲壮感を帯びていき… ……… で、必ず問われることですが… 結局、最後まで姿を現さないゴドーとは何者なのか… まあ、ゴドー=「神」とするのが一般的な回答なのでしょう 決して姿を現さない存在…それでも、人は諦めきれずに、つい当てにしてしまう、「いつの日にか…」と頼りにしてしまう 確かに、すんなりとおさまりそうな気もします でも…気をつけなければいけません 不条理劇の最大の教え、それは、おそらく「無意味性」 意味など何もない、ただの偶然なのに、そこに一生懸命何かしら意味を貼り付けようとする人間の滑稽さを皮肉っているのです 冷静になれば、過ちに気づきそうなものなのに、たやすく罠に陥ってしまう 罠を仕掛けた当人は、きっと笑っています ベケットは、なかなか一筋縄ではいきません (引用終わり) さて、再読です sb'.jpg ゴドーを待ちながら 白水Uブックス 初めて読んだときは、義務感だけで読み始め、でも、中身は戯曲なので、サラッと読み終えてしまった気がしますが 今回は、割と時間をかけての再読 で、その感想ですが… 「おもしろい!」 ただ表面的に字面を追っていくだけでも、下手な漫才よりはずっと楽しめる そして、注も参考にしながら、一つ一つの台詞の由来、必然性らしきものを探っていく作業が、これまたおもしろい ま、そこから導き出された解釈は、ただの錯覚、ベケットの罠にはまっただけなのでしょうが… (以下、引用)  沈黙。 ヴラジーミル 何を言っているのかな、あの声たちは? エストラゴン 自分の一生を話している。 ヴラジーミル 生きたというだけじゃ満足できない。 エストラゴン 生きたってことをしゃべらなければ。 ヴラジーミル 死んだだけじゃ足りない。 エストラゴン ああ足りない。  沈黙。 ヴラジーミル ちょうど、羽根の音のようだ。 エストラゴン 木の葉のようだ。 ヴラジーミル 灰のよう。 エストラゴン 木の葉のよう。  長い沈黙。 ヴラジーミル なんか言ってくれ! エストラゴン いま捜す。    長い沈黙。 ヴラジーミル (苦悩に満ちて)なんでもいいから言ってくれ! エストラゴン これから、どうする? ヴラジーミル ゴドーを待つのさ。 エストラゴン ああそうか。 (別の箇所からの引用)  沈黙。 ヴラジーミル ひとつ、ためしてみたらどうだい? エストラゴン もう、なにもかもためしたよ。 ヴラジーミル いや、その靴をさ。 エストラゴン そうさね。 ヴラジーミル 暇つぶしにはなる。(エストラゴン、ためらう)間違いないよ。気散じになる。 エストラゴン 気晴らしか。 ヴラジーミル 気分転換。 エストラゴン 気晴らしか。  ヴラジーミル やってごらん。 エストラゴン 手伝ってくれるかい?  ヴラジーミル もちろん。 エストラゴン なあ、ディディ、おれたちは二人で、けっこううまくやっていけるじゃないか? ヴラジーミル そうとも、そうとも。さあ、まず左足からいこう。 エストラゴン いつもなにか見つけるからな、おれたちは、そうだろ、ディディ、存在感ってやつを感じられるようなことを。 (引用終わり) 人は、それぞれに与えられた「持ち時間」である人生を懸命に生きようとするが、結局耐えられず、持て余してしまう… ああ、またそういう定型的な解釈をするのかとベケットに笑われてしまう(笑) 「ゴドーを待ちながら」は、掛け値なしの大傑作です 今日の1曲 Isn't It Time 「イズント・イット・タイム」/ The Babys ベケット生誕100周年記念記事の選曲は、安直なwait「待つ」つながりで、フォリナーの"Waiting For A Girl Like You" 「ガール・ライク・ユー」でしたが、今回も負けず劣らず安直 やはり、waitつながりで、ジョン・ウェイト(John Waite)率いるベイビーズです http://www.youtube.com/watch?v=8okXAF9eJNo b'.jpg ベスト/ザ・ベイビーズ なお、後期ベイビーズには、後にジャーニーで活躍するジョナサン・ケインも在籍しました 以下の「再読」記事もどうぞ 「阿片常用者の告白」再読 「恐るべき子供たち」再読&再々読 P.S. 白水社様 イヨネスコもUブックス化お願いします

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