長寿遺伝子=サーチュインを活性化させると長寿になることが200年MITの研究でわかった。 この遺伝子はだれもが持っていて、活性化するにはカロリー制限をすればよいこともわかっている。人間で実験したところ、わずか数日のカロリー制限で活性化することもわかった。ただ、もしかし食事を戻すとすぐに戻ってしまうかもしれない。 サーチュイン遺伝子は、単細胞生物や酵母やラットなど多くの生物がもっていることから、比較的古い時代に獲得されたものであると推測される。 仮説として、栄養が十分にないときには自分自身を生き延びさせることを優先するためではないか?というものがある。 そもそも生命にとって生存するとは子孫を残すことで、多細胞生物では生殖がこれにあたる。 単細胞生物は分裂して増えるので、自分自身をコピーしているのと同じ。ある意味不死の生命。地球の生命史の3分の2は不死の生命が主役。 単細胞生物は分裂すると両方の細胞がリセットされ、新しい生命として時を刻む。 多細胞生物ではこの機能があるのは生殖細胞だけである。 多細胞生物が死ぬ運命なのはミトコンドリアの力で多くのエネルギーを生み出す代わりに活性酸素の害をうけるためという説がある。 このため細胞が死ぬ=アポトーシスという機能がついて、1日3000億個もの細胞が死んでいく、そのかわり細胞分裂によって新しい細胞がうまれる。 この細胞分裂の回数は生物の種類によって決まっており、その上限をヘイフリック限界という。これはいわば回数券の死。 体細胞には非再生系とよばれる、ほとんど再生せず何十年も機能を果たすものがある。人間では神経細胞や心筋細胞。この寿命は120年ぐらいが上限といわれている。この細胞が死ぬのは定期券の死と例えられる。 例外生物プラナリア。多細胞生物なのに単細胞生物のような増え方をする。 全身の細胞が全能性細胞だからできる。 でも、この方法を人間でやると、子どもができたら親も赤ちゃんにもどっちゃう! 大型生物は細胞分裂の速度がおそく、非再生系細胞の寿命も長いことがしられている。 また、がん細胞は回数券の枚数を増やすことで増殖します。回数券の枚数をきめるテロメアという部分をがん細胞はリセットしている。 しかし多細胞生物にとって自身の寿命を延ばすより、生殖の方が大切である。 人間の場合は生殖細胞は母親の胎内でつくられる。細胞の全能性を確保するため、早い段階でおこなわれるのだと思われる。生殖腺にたどりつくまでにたくさんのアポトーシスをおこして選別もおこなわっる。真核細胞なのにミトコンドリアの活動が著しく制限されテロメアの制約もない。 サーチュイン遺伝子がみつかったのは単細胞生物なのに老化する変わり者である酵母。 酵母は単細胞分裂なのに不等分裂する。 酵母が細胞分裂するときDNAがちぎれることがあるのだが、サーチュインはその原因を取り除く。そうして分裂回数を増やして酵母の寿命を延ばす。 しかし、他の生物では別の方法で寿命をのばす。 哺乳類ではさまざまな臓器で働いて長寿を実現する。その詳細は研究中。 カロリー制限がサーチュイン遺伝子を活性化することはわかりましたが、もっと楽に活性化する方法はないのか?研究がすすんでいる。 ワインに含まれるレスベラトロールがサーチュイン遺伝子を増やし、筋肉のミトコンドリアが二倍になったなどの研究もされています。 ただ、サーチュイン遺伝子を活性化しても最大寿命を実現できるかは疑問。 もともと飢餓状態を生き延びるための機能なら、最大寿命までひっぱる必要はないからである。 健康によい生活をこころがけないで、レスベラトロールを飲んでも望む長寿は実現できないかも。 サーチュイン遺伝子を利用して病気を治す研究もおこなわれている。 レスベラトロールも血管の老化である動脈硬化を予防する効果が指摘されている。 既存薬でサーチュイン遺伝子を活性化させる研究もすすんでいる。 もし、実現したら一元的な治療が実現し、疾患ごとに治療していた高齢者医療が大きく変わる可能性がある。 老化そのものを治療するという発想である。 心配されているのは、サーチュイン遺伝子が生殖とトレードオフになっているのではないかということ。 またがんを悪化させるのではないかということ。 コラム ES細胞・・・受精卵から取り出す万能細胞。受精卵を壊すという問題がある。 iPS細胞・・・分化した細胞を4つの遺伝子を操作して万能性をとりもどされる。 再生医療の可能性は大きく広がったが、万能細胞を移植した場合癌化しやすいという報告もあり、まだ研究段階。 最新の科学は常に生命観の練り直しを求めてきた。 今、日本は寿命がのびることで先送りされてきた人々が亡くなり、2005年には死亡する人の方が多くなった。最終的には年間150万人が死亡する多死社会になる。 普通の医療をうけて死んでいくことができない人がでるかもしれない。 また医療が長寿のみを追いかけるのではなく、健康に生きられる期間を考慮して行われる時代になろうとしている。これは自ら選択していく時代になると思われる。 終末医療の現場で行われる胃ろうは必要か? 大切なのは本人の意思になる。ある病院では胃ろうを希望しない人は9割を超えている。 本人の意思がわからないと家族が悩むことになる。医師の助言も限られる。 難しい選択を助けるために、胃ろうでどの程度生き延びられるのかなどデータの収集をしたり、情報提供がはじまっている。終末医療はオーダーメイドになるべきかも。 がんの治療現場でとりいれられている緩和ケア。 モルヒネなどが主流だが、種類も多くあり使い分けることで痛みを取り除いていくことが必要。カフェインを使ったケースも。 緩和ケアにも経験だけでなくメカニズムを明らかにすることが必要。 これは薬の開発とは正反対の流れ。 緩和ケアの効果を患者が感じる痛みで数値化する試みも。 その人らしい時間を応援する医療が始まっている。 死別の悲しみをサポートする試み。 複雑性悲観・・・愛する人を失った悲しみが死別から半年をすぎてもつづい、日常生活に支障をきたすこと。 うつ病とまちがわれるが、うつ病の薬では効果がない。 この患者だけで強く働くのが側坐核。ここにきくのはドーパミンである。認知行動療法の研究もおこなわれている。死別の場面を語ることで、心の整理をする。 科学によって死にはいろんな選択肢がうまれている。われわれはそれを踏まえて死の選択の準備をしなければならないのかも。

NHKサイエンスZERO 長寿遺伝子が寿命を延ばす (NHKサイエンスZERO)
- 作者:
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/10/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)





