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ジャック・ケルアック著「トリステッサ」を読んで

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IMG_3020.JPG 照る日曇る日第622回 映画公開が話題になっているこの作者の「オン・ザ・ロード」と「そしてカバたちはタンクで卯で死に」(バロウズとの共著)を読んで、なんじゃこれは、ヘロイン患者の与太話を書き飛ばした三文小説ではないかと驚き、あきれ果てたわたくしであったが、翻訳が青山南氏だというので、騙されたつもり、清水の舞台から飛び降りるつもりで読んでみたら、あろうことかまたしてもの超々三文与太話であった。 ビート文学だかビートぶんぶく茶釜だか知らないが、毎日毎晩「酒歌女はた煙草」(なら佐藤春夫どまりだが)に加えてモルヒネを濫用しながら白昼夢をみているような人物が書き散らした文章に、いささかなりとも取り柄があるとは思えない。 青山氏によれば「モルヒネ漬けの売春婦をめぐる斬新で悲しくも美しい比類なき小説」というのが当時のキャッチコピーらしいが、実際に読んでの感想は「モルヒネ漬けの売春婦をめぐる支離滅裂の三流ヘロヘロ小説」、であったのは誠に残念なことだった。  しかしこれまた青山氏の解説からの引用になるが、ケルアックは彼の「即興的文章の要点」で「表現を精選することはしない。心が自由に脱線して果てしなく主題を吹き流しながら思考の海の中に入っていくのを追いかけ、リズムだけをもっぱら気にかけてレトリックの息づかいや曲げられた文意であふれる言葉の海のなかを泳いでいくことだ」と論じているそうで、肝心の小説は落第点だったが、このコメントには大いに共感する次第である。 コンクリーの電柱高く幣巻かれ神社の祭礼近づきにけり 蝶人

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