内容(「BOOK」データベースより)他の作品とまとめて紹介しようかと思ったが、僕にとっては初めての作家なので、あえて独立した記事として書く。 この文庫版の表紙は、一時書店の文庫本コーナーの平積みの中でも結構目立っていたので、気になっていた作品ではあった。僕はあまり本の購入にお金をかけないようにしているので、図書館で借りれるまではじっと待つ。この作品も、先月になってようやくコミセンの図書室に入荷し、新着本のコーナーで紹介されるに至った。さっそく借りてみることにした。 三姉妹とその母、そして母の妹るり子の再婚相手の5人の視点から見た「るり姉」のいる日常が描かれている。三姉妹の母は離婚経験者、妹るり子も離婚経験者と、現代社会にはありがちな設定ということができる。るり姉を取り巻く5人の視点から異なる時点が描かれているので、読み進めるにつれてこの家族の4年間ぐらいの歴史がわかってくる。 読みはじめて最初に登場したのが、長女さつきの目線から見たるり姉検査入院のお話。いきなりの波乱の予感で、こういう展開は一時期の重松清の作品に見られたパターンを彷彿とさせる。シゲマツさんは、ここまで登場人物が女性ばっかりという作品は書かないだろうが。 序盤から主人公の体調の異変を見せて、当然、エンディングに向けて徐々に衰弱の過程を見せていくのかと予想した。ところが、その後の話はいったん過去に戻る。るり姉の病気の示唆すら一切見せず、話が淡々と展開する。日常を描いているので、例えばるり子の姉のけい子が勤務先の病院で主任とうまくいっていないことや患者の1人から嫌がらせを受けていることなど、ストレスのたまるエピソードがあっても、それらについて胸のすくような解決などさせもしない。 るり姉の病気について全く布石も打たず、話は最終章。しかも検査入院の話から時は流れてなんと4年後である。しかも、さんざんじらした上で最後にはるり姉を登場させている。人が死ぬのを期待するなど不届きでなかなか言えないものだが、騙された感が半端ではない。女シゲマツを期待した僕が馬鹿だった。 あまり好きな構成じゃないです。
十代の三姉妹が「るり姉」と呼んで慕うるり子は、母親の妹つまり叔母さん。天真爛漫で感激屋で、愉快なことを考える天才だ。イチゴ狩りも花火も一泊旅行もクリスマスも、そして日々のなんでもない出来事も、るり子と一緒だとたちまち愛おしくなる―。「本の雑誌」2009年上半期エンターテインメント・ベスト1に輝いた傑作家族小説。ラストの静かな感動が胸いっぱいに広がる。
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『るり姉』
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