娼館で生まれ、暴力的な父親から逃れるように家を出て、路上生活を始めた少年ギィ。 彼にはひとつの才能があった。デッサンや絵を描く才能が。絹織物の図柄を創作する工房に入ることになったギィは、そこで絵の才能をめきめきと伸ばしていく。 水彩画を路上で販売したり、個展を開いたりして、ギィは自身の創作活動も続けていく。しかし、同時に何か物足りなさも感じ始める。彼の描く絵はそこそこ売れるものの、市場での評価は伸び悩んでいたのだ。 自分には何が足りないんだろう? ひょっとしたら、偉大な巨匠たちの作風をまねてみたら何かが掴めるかもしれない。そんな考えから巨匠たちの作品を模倣し始めてみる。 巨匠のあらゆる作品を研究し、巨匠の思いをくみ取り、しまいには巨匠の作品そっくりに絵を描けるようにまで成長する。 しかし、彼のその才能に目を付けた画商たちが、彼をアートの裏世界に彼を引きずり込んでいく。贋作という犯罪世界に。ギィはいつの間にか、贋作のエキスパートとなり、ピカソ、シャガール、ダリ、マティスといった画家たちの贋作を次々に描いては、本物として市場に流して大金を稼ぎ始めるようになってしまう……。 贋作絵画を大量に描いた画家ギィ・リブによる自伝。贋作の世界というのはこんななのかという裏話がたくさん書かれていて興味深い。贋作画家だけでなく、画商やら鑑定士やらも贋作の流通に一役買っていることが見えてきて、アート界の裏事情を知ることができる。 どんな創作も模倣から始まるというけれど、模倣を極めてしまったらどうなるんだろうという創作的な観点から見ても面白い。贋作というのも自分を押し殺してしまうようなイメージがあったが、実際にはそうでもないらしい。自分自身の感動をプラスアルファとして入れていかないと、作品に魂がこもらないのだとか。贋作が本物として認められることにも独特の喜びがあるらしいというのも知らなかった。 犯罪は犯罪だが、ここまでのレベルになると職人芸という気もしてくる。ギィは最後には捕まってしまうけれども、最後の最後に思わぬ大逆転がある。芸は身を助けるというのはまさにこのことかと思った。
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