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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第36回)

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 忍者ショ―の舞台裏には、役者たちが使う控え室がある。 この日、午前の舞台が終り、役者スタッフが、その控室に集まって茶を飲んでいたところ、スタッフの中の男女二人が突然苦しみだし、まもなく息絶えたのである。   救急車はすぐに呼ばれたが、運ばれた病院では手の施しようもなく、死亡確認がされただけだった。  事件性があるため、遺体は、すでに、検視に回されていたが、死因として、毒物による中毒死が疑われていた。 茶を飲んでいたのは、死んだ二人だけでなく、他にも十人ほどいたが、他の者には何の異変も起きていなかった。  茶が入っていたやかんと茶を飲むのに使われた湯飲みは、すでに証拠品として押収されており、当時映画村にいた観光客と映画村スタッフの全員が足止めをされ、事情聴取が行われていた。  映画村には、右京署のみならず府警本部からも捜査員が駆けつけ、舞台裏の一室で、捜査一課の毛利警部が唐沢と話していた。 「死んだのが、正面橋事件の目撃者の二人で、それも毒物でということになると……福本父娘(おやこ)の殺害と関係がありそうなんだが……俺には、さっぱりつながりが分からん」  毛利がぼやいた。 「ですよね。 だけど、今日の事件の背景が分かれば、福本父娘殺害の犯人の姿も見えてくるんじゃないすか、頑張りましょう、先輩」  唐沢は、そう言って毛利を励ますと、さらに付け加えた。 「先輩、こうなったら、安藤先生のお力を借りてみましょうよ。 こうやって、私、唐沢が先輩のことを思って、身重の新妻をホテルに預けてですよ、助っ人に駆けつけてるんですから、言うこと聞いてくださいよ、いいすね」 「ああ、分かった、分かった。 物は試しって言うからな、後学のためにも、この目でじっくりと、そのプロファイリングとやらの真偽を、確かめさせてもらうか」 「またまた、可愛くない言い方しちゃって。 先輩、素直になりましょうよ、素直に」 「なってるじゃないか、素直に。 安藤先生に、プロファイリング、やっていただこうと、言ってるだろう」 「はいはい、素直になられてますね。 とにかく、ちゃーんと頭を下げて、先輩からも、頼んでくださいよ」 「ああ、分かってるさ」  毛利は、投げやりに言った。 「ところで、目撃者のカップルは四人いたはずですが、残りの二人の方は、無事なんすか?」 「大丈夫だとは思うが、今のところ」 「今のところ、ですか? で、死んだカップルが、この映画村の役者さんってことで、あとの二人は何やってる連中ですか?」 「ん? ああ、二人ともな、洛北大の大学院生だと聞いてるが」 「へえー、あの、洛北大の、大学院生。 じゃあ、インテリですね。 うーん、正面橋の目撃者は、役者と大学院生だったわけですか……だとすると、カップル同士に、つながりは……なさそうですね」 「だろうな」  毛利は曖昧に答えた。 続く

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