『アメリカ大統領制の現在』 待鳥聡史 2016/09
著者は京都大学大学院法学研究科教授。 アメリカ大統領制の成り立ちや特徴・問題点などを分析する本。
近代国家として初めて大統領制を採用したのがアメリカ。アメリカの政治制度は2つの柱によって成り立ってきた。一つは「連邦制」、もう一つは大統領、議会、裁判所の「権力分立制」。
アメリカ合衆国憲法が想定していたのは、イギリスと同様に議会が政策決定の中心であり、それを君主でなく大統領や裁判所が抑制するという連邦政府運営のあり方。そこでの大統領は、議会が立法を通して形成する政策に対して、事前あるいは事後に注文をつける存在。
20世紀以降、大統領の存在感と役割は拡大した。メディアに報道されることで、有権者の大統領への期待はますます強まった。世界的に見ても、議会ではなく大統領が政策決定を主導するのは、20世紀の大統領制諸国においてごく一般的になっていた。
アメリカ大統領は多数派(議会)の行き過ぎを抑止することが想定された制度構造(憲法)のままで、多数派(国民)の期待を担うという矛盾した役割が与えられ、そこで大きなディレンマに直面することになった。
レーガン時代に大統領と連邦議会の関係は大きく変わった。議会の暴走を抑止する大統領という構図が、大統領の暴走を抑止する議会という構図へと変化した。これが現代大統領制である。
大統領制を採用する国は20世紀に増加するが、その多くは憲法上の大統領の権限をはじめから大きくしておいた。アメリカは憲法改正を通じた大統領権限の拡大は行われなかった。解釈や運用によって権限を拡大できれば、実質的な問題はない。だが、それは、議会や裁判所を含めた主要アクターの合意がある限りにおいてのみ、政治の安定をもたらすものであった。
アメリカ大統領は予算と法案のいずれについても提案権を持たず、連邦議会を通過した法案に対する拒否権しかない。その一方で政党の中央組織が実質的な機能に乏しく、大統領は所属政党指導者としての権力行使もほとんど不可能である。比較政治学の観点からは、大統領が影響力を行使しにくいことがアメリカ大統領制の基本的特徴である。
現代大統領制のディレンマを解く鍵の一つは、大統領と連邦議会との協調関係の構築、さらにはそれを通じた大統領支持の多数派形成である。
↧
アメリカ大統領制の現在
↧





