「星々の蝶」は、ベルナール・ヴェルベールというフランスのSF作家が描いた小説である。 SF小説のテーマのひとつに世代宇宙船ものというのがある。 もし将来、地球が人口過密になったり、核戦争や環境破壊によって住みづらい環境になったらどうなるだろう? 人類は新しい住処を求めて惑星探査に乗り出すことになるのではないか? 宇宙には地球と環境が似たハビタルプラネットがいくつも存在するという。もしそんな惑星に行くことができれば、植民地にして開発することができる。 問題はそのような惑星が何光年も離れた遠いところにあるということ。そんな遠い場所に行くことは不可能に近い。ワープなどは空想的すぎるし、冷凍睡眠装置は人体の細胞を破壊してしまう。 ただ、系外惑星に到達するための方策がないこともない。それは巨大な宇宙船を作ってしまうということ。大きな宇宙船の内部に地球環境をそっくりそのまま再現してしまう。その中で自給自足しながら新たな惑星めざして宇宙飛行するというやり方。目標までに何千年もかかる、世代交代を繰り返しながらの気長な旅だ。世代宇宙船と呼ばれる方法である。 本作はまさにこの世代宇宙船をテーマにした作品なのである。 世代宇宙船ものの作品というのは本作以外にもたくさん書かれているが、たいていは宇宙飛行の途中から描かれることが多い。既に地球を離れて何世代か時代が過ぎてからのドラマが描かれることが普通だ。 本作が面白いのは、普通なら省略されるような世代宇宙船を作るところからきちんと描いていることである。巨大な宇宙船をどうやって建造するのか? 人工重力をどのように作るのか? 内部の環境をどのように再現するのか? 結構丁寧に描いている。土を敷き詰め、川や湖を作り、植物を植え、虫や動物を放つ。ミニサイズの地球を作る過程が楽しい。 環境だけ作ればいいというものでもない。10万人以上の人間が生活することになるので、秩序も必要である。社会秩序を作るために法律を制定しルールを守らせる。政治的な意思決定機関を新たに作り出す。労働を分担させる。こうした社会環境の整備に関しても、細かく考えられているのである。 もちろん、世代宇宙船建造のドラマだけでなく、その後の展開も面白い。世代交代の様子もしっかり描いていて、時代を経るごとに宇宙船内部は変貌していく。内部対立や戦争、病気の蔓延などの事態が起こる。当初の理想は失われ、宇宙船が何を目的にしていたのかも忘れさられてしまう。 まるで架空の歴史物語を読んでいる感覚があって、人類社会をを風刺しているみたいで興味深かった。 最後の最後にこういうオチになるのねという結末が待っていて、賛否両論あるようだが、全体的には楽しんで読める本だ。 この作家のものは結構面白い作品が多いけれども、ある時点からふっつりと翻訳されなくなって久しい。まだまだ未訳の作品もあるので、翻訳出ないかなあと待ち望んでいる。やはりフランスの作家だから翻訳が難しいのだろうか? 現代SF作家の中で一番好きだったりするのに、非常に残念だ。
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