![科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE) 科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)]()
著者は麻布中学・高等学校で、40年以上「理科・地学」を教えてきた。「物理や化学みたいな分析的・個別還元主義的な自然の見方以外に、まず総合的・全体的に対象を捉える方法もあるということを伝えるのを目標に」してきたという。本書中、プレートテクトニクスなど「科学」的で難しそうな内容も含まれているが、全体にわかりやすいのは、多分に著者の経歴が関係しているのだろう。
本書について「年表形式で歴史の流れがつかみやすい」とあるのを見て、事実だけを記述した無味乾燥な印象を当初もったが、そうではない。個々の事例を取り上げつつ、興味深い話題が取り上げられる。それゆえに、読み物として楽しむことができる。たとえば、『864年~66年 富士山噴火(貞観の噴火) 富士山最大の噴火記録』では、富士山の北側にあった「せの海」が溶岩流でふさがれて、「かろうじて残ったのが西湖と精進湖」であること。『1586年 畿内・東海・東山・北陸諸道で地震 (天正地震)』に関しては《この地震は謎の多い地震で、また「帰雲城」(かえりくもじょう、きうんじょう)伝説を生んだ地震」と紹介され、「埋蔵金」の話と発見した場合の権利関係について触れられている。また、日米戦争開戦前日に起きた『1944年 南海トラフ東部で巨大地震(東南海地震)M7.9』では、《・・政府・軍が厳しく報道を規制したために、正確な情報は報道されませんでした。しかし、これだけの大地震なので、世界中の地震計で記録され、ただちに日本の中央部で大地震が起きたということは知られてしまっていたのです。また、すでに制空権を握っていたアメリカ軍の偵察で、被害の状況もほぼ正確に把握されていました。つまり、知らないのは日本の一般市民のみということになっていたのです》という記述もある。そのような例を取り上げていくとキリがない。
『第0章 地震と火山が多い日本の基礎知識』(1.プレートテクトニクスと日本/ 2.日本の地震の特徴/ 3.海溝で発生する津波/ 4.日本の火山の特徴/ 5.破局噴火 超巨大噴火/ 6.地震と火山は恩恵ももたらしている)と『参考』(1 断層の種類と断層をつくる力/ 2.火成岩の分類とマグマの分化)では、地震・津波・火山の科学的解説がなされ、第1~第5章ではそれぞれの時代区分のなかで発生した個々の地震・災害について示される。すでに、記したように、その解説に際して、興味深い話題が取り上げられるのはもちろんのこと、第0章、『参考』で取り上げられた地震のメカニズムについて繰りかえし説かれるので理解が増す。その際、仮説は仮説として示されていく。
日本の地震・災害が多い理由として、《日本は4つのプレートがひしめき合っているところに位置していて、3つのプレートが一点で接している場所(三重点、トリプルジャンクション)が、2ヵ所もあるという大変な場所なのです》とある。ジャンクションと聞くと、道路事情を思い浮かべるが、「ダブル・トリプル・ジャンクション」(という言葉は本書中に示されていないが)では、いかにも交通事故が起きそうである。世界にもまれな日本の立地を知るうえで、また、日本で発生する地震・災害の「癖」を知るうえで、本書はたいへん有用に思う。