『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?』 佐々木融(とおる) 2013/04
著者は元日銀、JPモルガン・チェース銀行債権為替調査部長。 インフレの弊害を指摘する本。
(インフレで)日本を無茶苦茶にして子供たちの世代に引き継ぐわけにはいかない、と述べる。ではデフレ下で膨らみ続ける国の借金は引き継いでも問題ないと言うのだろうか。自論に都合の良いところしか見ていない感じだ。
日銀がお金を発行しても、企業や個人への貸し出しには直結せず、インフレにはならない、と述べる。
インフレになると資産価値が上がるので貧富の差が拡大する。
本来の課題はデフレではなく「需要の創出」だ。
一方で日銀の国債引き受けでハイパーインフレになるという。それには政府の財政支出で国民にお金が流れることが前提だ。
円安がインフレ率に与える影響は限定的。円安で輸出企業が儲かっても給料はそれほど上げないので、日本経済に良い影響は無いという。
財政赤字が拡大するだけでは国債市場は崩壊しない。「円の価値」がなくなりそうなときハイパーインフレとなり、皆が日本国債から逃避する。
為替は長期的には購買力平価=インフレ率の動きに連動する。日本のインフレ率がアメリカより低いままなら、長期的に円高方向に動き続ける。日本のインフレ率がアメリカを上回るようなことが起きた場合、米国では相対的に物価が安くなっており、これまで以上に安く輸出する必要があるので、受け取るドルは少なくなると述べる。日本のインフレ率が低い現在、価格競争力が低くて受け取るドルが低いことには、著者は触れていない。
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