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第26回 - 帰 途 (その1) -  ▲- Ⅲ

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【長編・青春ホラー小説】
  影、つどう 
  (第26回)      - 帰 途 (その1)-  ▲-Ⅲ

BGM : Jean-Luc Ponty  “ NOSTALGIA ” 



  再び坂越駅に近づくにつれ、国道は次第に混雑し始めた。その夜二度目の帰宅ラッシュが始まり、駅周辺は残業や宴会を終えた勤め人たちで賑わっている。特に駅前広場と祥雲橋に挟まれた交差点の周辺は混雑がひどく、交差点周辺に点在する停留所を減速しながら往来するバスが渋滞に拍車をかけていた。だが新幹線開通に合わせ工事が進んでいる駅ビル、と言うか3階建て木造駅舎の大改装が完了すれば、国道沿いのバス停も大半がロータリー周辺に移転し、駅周辺の渋滞は大幅に緩和される筈だった。
   くすんだネオンや行き交う車のヘッドライト、点滅するブレーキランプが重なり合って車内に射し入ってくる。周囲には街頭放送や酔っぱらいの交わす大声が渦巻き、先ほどまで車内を満たしていた雨の夜の静寂 
(しじま) は既に跡形もなかった。
  そこは、ささやかだがそれなりの規模と設備を持つ駅前の繁華街だった。どれほど田舎じみてるとは言え、そこに溢れる音と光のきらびやかさは田園という言葉にはほど遠い。

  「変たな町だな。坂越は」
  「え?」

  比較的スムーズに動いている上り車線をぼんやり見つめていた螢は、奇妙な表情を浮かべ卓也を見た。

 「変って、どこがです?」 

 螢の態度はいつもと変わりなかった。口調もきびきびとした、僅かに高圧的ないつもの詰問調に戻っている。しかし螢が自分の変化に気づいた様子はなかった。

 「河南町からこごまで、駅一つ分しか離れでねえべや。だども周りば
見でみィ。こごまで雰囲気違うんだぞ。さっき国道さ戻る前に、寂れだ墓場の横何度も通ったべや。あったな本当に幽霊の一匹、いや幽霊どごろが妖怪のご一統さん位 (ぐれェ) 出で来たって何 (な) ったも不思議で無えような場所ど、この騒々しい大通りど一体どのっ位 (けぇ) 離れでるってよ? たがだが隣町同士だづゥのにハァ、まるで別世界が、んでねェばハァまるっきし別の時代でねえが」
  「幽霊は一匹二匹とは数えません。それに幽霊どころか妖怪、ってそれ一体どういう差があるんです? 相変わらず意味分かりませんね。先輩の話は
 
 卓也の抽象的、と言うより独り合点し切った
話の腰を、螢は一片の容赦もなく理路整然とへし折った。

  続く

 

 

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