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龍神の雨/道尾秀介・著/“トリック”だけに注目しないで読んでほしい!

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龍神の雨 (新潮文庫)

龍神の雨 (新潮文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/01/28
  • メディア: 文庫
おっちょこちょいです。 読みたかったのは道尾秀介先生の直木賞受賞作だったのに、 「龍神の雨」を買ってしまいました(読んでしまいました)。 直木賞受賞作は「月と蟹」で、「龍神の雨」が受賞したのは 大藪春彦賞だったんですね。 眠いなぁと思いながらAmazonさんのサイトを検索してて、た ぶん道尾先生の名前についてる冠コトバ「直木賞作家」を 「直木賞受賞作」と読み違えたのかもしれません。早とちり っていうか。 いずれにしても、大雑把だし、にぶ過ぎますよね。 ま、「月と蟹」がどんなストーリーかを知ったうえで読みたか ってわけでもなし、別に「龍神の雨」が先になったところでな んの問題もないんですけどね。 にゃははは。 えっと、では気を取り直して、「龍神の雨」の書評的なものを 載せたいと思います。 「龍神の雨」という物語の中心にある事件は、添木田蓮(19 才)という青年が、継父の殺害を企てたことから始まります。 蓮と、蓮の妹・楓(中学三年)は、再婚してすぐ交通事故で母 親が亡くなってしまったためにほぼ他人といえる継父と三人で 暮らすことになったのですが、母の再婚相手は蓮と楓の二人 の目には最低最悪のオトコに映ったわけです。 母の死後、自分たちに暴力をふるうようになり、会社を辞めて 引きこもりとなり、そして楓のカラダを狙いかねない危なさを見 せる、「拒絶したい他人」以外の何者でもなくなってしまうん ですね。 しかし台風がもたらす雨が間接的な要因となって、蓮の殺害 計画は思わぬ方向に転がりはじめます。 継母と三人暮らしながらその新しい母に心を開くことができな い溝田兄弟(兄は中二、弟は小五)の運命をも巻き込みなが ら、「最悪の事態」よりもっともっと下へと落ちていってしまい ます。 前半はミステリーというムードではなく重めなクライムサスペ ンスだったので、ミシェルは「龍神の雨」はミステリーではな いんだなと思ってしまっていました。 しかし、そこは道尾先生ですから、そんなはずはありません でした。中盤以降にギアが変わって、「道尾流のトリック」全開 の「道尾ワールド」にドド~ンと突入したのでした。 途中で、誰かの話が嘘であったことがわかり、仮面をかぶっ ていたとんでもない人物のことがわかり、で、蓮たちは大きな 見落としをしていたことがわかって、ストーリーは予想だにし てなかった展開を見せます。 ・・・という紹介の仕方だと、「龍神の雨」は、読者を気持ちよく 騙してくれる道尾トリックがウリ、な~んて誤解されるでしょ うか? もちろん直木賞作家の道尾秀介先生ですから、それだけって ことはありませんよ。 自分の弱い部分や自分が愛する者を守るために視野狭窄と なりエゴをむき出しにして過ちを犯し続ける人間という生き物 の未熟さ、それと、過ちを犯さないと大事なことに気づけな い愚かさ、そんなものが「龍神の雨」の物語の中に巧みに描 きこまれていると思えました。 とにかく、道尾先生は、作家としてはまだ若いといえると思う んですが、なんてウマいんだと唸ってしまうことが何度かあり ましたもんね。 ぜひ、ミステリーの「仕掛け」だけに注目しないで、二組のキ ョーダイを中心にして書かれた「人間の業」の物語として読ん で、思わず唸ってもらいたいなと。 最後に、あえて気になったことに触れておきます。 (まだ道尾先生は若く、発展途上にあると申したいからです) ある人物が、低く垂れこめた雲間に「龍」の姿を見るわけです けど、伝説の龍のお話と、シリアスなミステリーサスペンスの 融合がうまくいってるようには思えなかったですね。 比喩にしてもおかしいし、寓話として成立もしてなかったし。 あと、蓮のような聡明な人物が「この男は殺すしかない」とい う最後の最後の手段に打って出る理由(動機)の説明が、消 化不良気味だったようにも思えました。もっと突っ込んでも よかったように思います。 おわり
月と蟹

月と蟹

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09/14
  • メディア: 単行本

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