素敵な女性と格好良い男性のお話
「この雨が上がれば、もう夏でしょう」
「今年の夏だ」
「来年になれば、去年の夏よ」
1967年1月8日の朝食時間に僕の仕事先のひとつである漫画
週刊誌の編集長・野田さんから電話があった。
頼みたいことがあると言われ喫茶店で落ち合った。
野田さんは「お嫁さんの件」と言った。
うちの会社で制作担当をしている三村恭子さんという25歳の
独身がいる。文句なしの美人なので会って、つきあってくれと
言われ食事をすることをOKした。
別に、2ページ物の連載を頼まれた。
外に出て歩いていたら野田さんと同じ出版社で別の漫画雑誌の
編集長・大杉さんから仕事を頼みたいと言われ酒の店「梢」で
会うことにした。
梢の店主は女性で美和子さんといい僕と同じ年齢で26歳だった。
大杉さんの依頼は、25歳でストリップ劇場の踊り子をしている
北原玲実にインタヴューして記事をまとめて欲しいと言われた。
玲実さんと会い、漬物が食べたいと言われ、一品料理と酒の店で
飲みながらインタヴューをした。
先週の金曜日に僕は「梢」で三村恭子と食事をした。
土曜日の午後、僕の住んでいるところが見たいと言われ彼女を
自宅に連れてきた。
僕の家は母屋と別棟があり、僕は別棟に住んでいる。
彼女は自分はお嫁さん候補ではないのよといい、僕は彼女が別棟に
いる姿を見て、ずっとここに住んでいるひとのように見えるいった。
ここに住むことを勧めると僕はいった。
僕の部屋にはレコードプレイヤーとジャズのLPが置いてあった。
この後、彼女は僕の別棟を借りて住んでいる。僕は母屋へ越した。
僕の行きつけのお店は「ガロータ」といい、店主の西浦さんがジャズ
の愛好家で、僕はこの店でウィスキーを飲みながら落ち着いた時間を
ジャズのLPを聴きながら過ごしていた。
北原玲実をインタヴューしてまとめた記事を、そっくりフィクションに
書き換えて短編小説の中に使うというアイディアが頭の中を走り抜けた。
バスの座席のセレナーデというフレーズが頭の中に浮かんだ。
1957年ジャズのトランペット奏者のLPの題名だった。
夏は猛暑を避けて、涼しい部屋で読書をすると新しい出会いが待っている。
昭和42年いい時代だった。普通に生活が働くことができる環境にあった。
そんな時代へのノスタルジーで書かれたのかも知れない。
格好良い男を学ぶなら片岡義男の本は素晴らしい。