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山田風太郎『戦中派動乱日記』(小学館文庫)

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山田風太郎の(そろそろこの名前で活動する小説家になりつつある時期です)昭和24~25年にかけての日記です。医学校を卒業してインターンになったかと思ったら、5月あたまにはもう作家となる決意を固める年からのスタートです。つまり大半は新人作家としての活動記録なので、小説家としての山風ファンには必読の一冊になっています。 この時期に執筆された作品のうち、切支丹ものについては徳間文庫の『山屋敷秘図』に収録されているので、手元に置いておくと日記に出てきた作品がすぐに読めておすすめです。資料を集める→何日か執筆する→掲載される→原稿料を受け取る、という流れで、かなりの作品名が登場しています。中には勝手にタイトルを変えられるとか、当初予定していたのと違う雑誌に何故か掲載されていたとか、稿料が入るまでにえらく時間が空いたりするケースもあり、終戦後の娯楽小説雑誌の裏側をのぞき見た気分になれます。 かなりの勢いで書きまくっている著者もですが、それ以上に次から次へと出てくる小説誌の名前の多さに驚きます。その一方で「新青年」誌がなくなる話も出てきますし、他には現実の事件と絡めた執筆依頼なども世相を如実に映していて興味深いところです。先輩作家たちと関わる機会も格段に増え、江戸川乱歩に横溝正史に高木彬光にと、しょっちゅう知ってる人の名前が出てくるのも探偵小説好きにはたまりません。 敗戦後から4年経って社会情勢が少しは落ち着いてきたのか、物価についての記述はかなり減ったような気がします。相変わらずなのは読書量で、特に資料というわけでもなく国内外の書物を貪り読む生活は変わっていないようです。増えてきたような気がするのは遊びに行った話で、と言っても店の名前しか出ていないんですけれども、そこで貰ってきた病気をペニシリンの集中的な服用で治した記述には笑ってしまいました。すみません。 戦中派動乱日記 (小学館文庫)


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