朝ドラでは邦文タイプも登場する「とと姉ちゃん」が人気だが、推理小説での邦文タイプを考えてみたい。
西村京太郎氏の作品には、タイピストと共に邦文タイプや和文タイプの表現で登場する。明らかに邦文タイプを意識したものとしては、1963年12月に読切傑作集に掲載された「私は狙われている」で「・・会社のタイピストをしている松山弘子という女と・・」「・・タイプ印刷された数ページの報告書に眼を通した。」が最初だろう。また、タイプされた文字は筆跡をごまかすために使われ、1964年10月の小説の泉に掲載された「罠」では「・・私は紙片に眼を通した。タイプされた文字が並んでいた。一人の男の履歴書になっていた。「タイプだ」「あの人は筆跡も他人に知られたくないのよ」・・」と記載されている。
さらに1974年産経新聞社から出された「日本ダービー殺人事件」では、「・・わかりました。邦文タイピストか看護婦だと面白いですな。」「・・今タイプ室でちょっとやってみたんですが、・・英文タイプと違って、邦文タイプの場合は個人のクセがほとんど出ないそうですから。」と文字の特徴を隠すにはうってつけの方法となっている。
1977年12月徳間書店から発刊された「ゼロ計画を阻止せよ」では、「・・筆跡をかくす方法はいくらでもある。活字を切り抜いて貼りつけてもいいし、或いは邦文タイプで打ってもいい。」と。1977年2月日本文華社から発行された「血ぞめの試走車」では、「・・頁をひらくと和文タイプで「雨宮営業部長に関する報告書」と印刷してあった。」と、和文タイプの表現が登場する。
このように、1984年に野生時代に掲載された「特急「白鳥」十四時間」に「・・ワープで書いた挑戦状は・・」とワープロの表現が登場するまで、邦文タイプは西村作品でも利用された。





