ヨーロッパからアメリカ大陸南端を通る西側航路を渡り、日本に漂着したイギリス人ウィリアム・アダムズ(三浦按針)の伝記。 エリザベス1世がイギリスを統治していた時代、ヨーロッパの商人たちは、世界に向かって冒険を繰り広げていた。香辛料に金や銀、新たな市場など、巨万の富を求めてアジアやアメリカへと向かう、し烈な競争が巻き起こっていた。 アダムズもそんな冒険に思いをはせる人物のひとりだった。彼はオランダの貿易事業に参加することになり、リーフデ号に乗って、香辛諸島を目指す航海に出る。 だが、その航海は想像を超えた苦難の連続だった。アフリカ西岸に着いた頃には、すでに食料は尽きようとしていた。食料を補給しようと、陸地に上陸しようとすると、土着の者たちに襲われ、船員たちは次々に無残な死に方をした。航海自体も困難を極めた。ひどい嵐に襲われたり、厳冬に悩まされたり、太平洋では現在位置さえも定まらず漂流したりもした。壊血病や熱病に襲われ、船員たちの人数も残り少なくなっていった。 そんな地獄のような航海を経て、ようやくたどり着いた場所が日本の豊後の港だった。着いた頃には船員たちはみな飢えかかり、病に倒れ力なく横たわっていたという。そんなアダムズら一行は、日本の町や人々を見て仰天する。そこには未開人や野蛮人がいるのではなく、洗練された文化が広がっていて、優雅な衣類を身にまとった人々が生活していたからだ。 こうしてアダムズは長い航海を終えたわけだが、彼の本当の冒険はここから始まることになる……。 前半の航海の部分だけみても、ジュール・ヴェルヌの冒険小説を読んでいるような大迫力の内容で、非常に読み応えがある。当時のヨーロッパの人々にとって、日本に来るのがこんなに大変だったのかというのがよく分かるように書かれていた。 だが、本当に面白くなるのはやはり日本に着いてからで、日本に渡来した外国人たちと日本人との交流が詳しく描かれている。 アダムズが日本に漂着したときというのは、ちょうど関ヶ原の合戦の直前の時代。アダムズは徳川家康に召しかかえられて、旗本にまで上り詰める。当時のアダムズと家康との関係が非常に詳細に描かれていて、当時の人々がこんな生活をしていたのかということが目に浮かんでくる。 キリスト教と日本との関係も変遷が分かるように描かれていて興味深い。最初は、宣教師たちを重宝がっていた家康だったが、やがて、キリスト教徒たちが増えていくことに脅威を感じるようになると、キリスト教を禁ずる方向に進んでいく。家康以降も禁教は続き、信者をせん滅しようとする恐ろしい場面も描かれていた。カトリックとプロテスタントとの争いも日本を舞台にして繰り広げられていたようで、プロテスタントであるアダムズらとカトリックであるイエズス会宣教師らが対立する。 当時の世界史と日本史がどのようにリンクしていたのかが、本書を読むとよく分かるので、非常に勉強になる本だった。アダムズという人物も名前くらいしか知らなかったので、こういう人生があったのかと、読んでいて驚かされた。
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