以下、上記書籍からの引用。 第4章 生み出す知性ー表象とその生成 3節 「作り出される記憶」から *********** (前節で、知覚表象がこれだけ不正確ではかないことがわかったのだから、記憶表象はもっとそうだろうと予測できる。実際にその通りである。この節では、記憶表象がはかないものであること、そしてそのはかなさを補うために人はどのようなことをするかについて、考えてみたい。)p121 中略 つまり、繰り返しの暗示とイメージを作り出すことにより、全く経験していない出来事が自分の記憶になってしまうのである。こうした記憶は虚偽の記憶と呼ばれている。また、虚偽の記憶には、聞き取りを行う聴取者の期待(思い出してほしい)に沿いたいという調整も、重要な役割を果たしていると言われている。p124 そして、最も重要なことは、これらの虚偽の記憶は、無意識のうちに形成されてしまうということである。誰も、自分で嘘の記憶を作ろうとは考えていないだろう。しかし、暗示とその繰り返し、そして聴取者の期待への同調が複雑な化学変化をもたらし、本人の知らないうちに記憶を作り上げてしまうのである。むろん被害を訴えた女性の記憶のすべてが虚偽ということにはならない。しかし、起きてもいないことを起きたと真面目に報告する可能性は否定できないのである。 こうしたことを考慮しながら、日本の検察、警察の取り調べを考えると、暗い気持ちになる。容疑者は逮捕、拘留後、他との連絡を遮断され、誰にも相談もできないまま最大2、3日間拘束される。そしてその間毎日取り調べを受けることになる。私の同僚の高木光太郎さんは司法と心理についての専門家であるが、彼から聞いた話によると、海外でこのことを含めた研究発表をすると、「2、3 “時間”の間違いだろう (日本人の英語は・・・)」と言って笑われるそうである。間違いではなく、本当に2、3“「日」”なのだというと、欧米の研究者たちは一様にひどく驚くという。それもそのはずで、かの国での勾留は数日程度であるからだ。 さて、2、3日間も勾留され、朝から晩まで数多くの暗示を含む取り調べを繰り返し受けていたらどうなるのだろうか。先に述べた実験からすれば、ありもしない記憶が形成され、「自白」が作り出される可能性は相当に高いと考えなければならない。実際、勾留された人の話を聞くと、はじめは絶対にやっていないと主張していたが、徐々にわけがわからなくなり、そんな気もしてきて自白してしまった、という報告がなされることがある。 警察、検察は、悪意で虚偽の記憶を形成しようとしてはいないだろう。しかし、今のような事態が続く限りは、冤罪は不可避だ。誤まった自白により、ある人が有罪となってしまうということは、真犯人を取り逃がしているということなのだ。このことを強く意識してもらいたい。また私たち一般市民も、被疑者が一度行った自白を法廷で撤回したと聞くと、「卑怯者」という言葉を連想的に思い浮かべてしまう。しかし、こうした考え方も修正しなければならない。p125 ************ 私はやってない:富山の冤罪事件 http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-09-10 冤罪事件:「明日はわが身」と思ってください http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2009-04-07-1

つくられる偽りの記憶:あなたの思い出は本物か? (DOJIN選書)
- 作者: 越智 啓太
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2014/12/02
- メディア: 単行本







