サリンジャー死後の作品であるようで、話題になるかどうかであろうか。
死後、その評判を得た作家というのは、実に多いが、芸術家とは大抵、死後、その評価を受けることの方が多いらしい。
その死後、50年近く経って世をアッと言わせたのが、シューベルトの大傑作「未完成」である。
これは、シューベルトだけではなく、クラシック、とくに交響曲においても評価が高く、また、シューベルトの偉大さを確定した。
当時の観客が、その音楽性に度肝を抜いたというのは、真の話で、作曲家の死後に再評価された例である。
ただ、こういったのは稀で、他の芸術家がこういった伝説を持っていることは、非常に少ない。
作家で近いと言えば、ドイツのフランツ・カフカであろうか。彼は、死後、遺作の数々が有名になった。
しかし、サリンジャーの場合は、生前から有名であり、その後、隠遁して何やら書いていた模様。そして、その遺作が、どう評価されるのか・・・ということであるのだが、既に、サリンジャーの評価は定まっている。この定石を打ち砕くような大傑作なら、これは、凄いのだが、余り、期待しない方がいいのかもしれない。
彼の作品の舞台は50年代のアメリカだった。
それが、今、手法を変えたりするといった試みは、多分ないだろう。
まあ、それでもサリンジャー・ファンなら、読む価値はあるのかもしれない。
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