長い信号待ち、ふと空を見上げた。都会の空は晴れていても、今一つスッキリしないから、無意識に目を擦ってしまう。田舎の空が恋しい。 郵便受けには、小学校同級会のお知らせの葉書。仕事に追われ、しばらくみんなとも会っていない。それなりの肩書きはついたが、風貌は「ナナフシ」のまま。今だに独り身だ。 意を決し、返信葉書の出席欄に〇印をしてポストに投函した。イメージチェンジを図ろうと僕は、この日からジムと日焼けサロンに通う。 初めて幼稚園へ通う子供の心境で、僕は同級会が開かれている寿司屋の暖簾を潜った。「元気？」とか「久しぶり！」の声が飛び交う、僕に視線が集まり「あれ誰？」。 そんな囁き声に、「ナナフシで～す！」と僕は思いっきり手を挙げた。「ウソ、あのナナフシ？まぁ東京に出ると、垢のぬけ方が違うわねぇ」 『すっかりオバサン化した、あなたこそ誰ですか？』と逆に聞きたかったが、その声を飲み込んだ。何十年ぶりかにあった顔は、それぞれの生活を映しているかに見えた。
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